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44 最初からわかっていたのに ページ45

彼はポケットから小さな薬瓶を取り出して、蓋を開けると掌にゴロゴロと小粒の薬を大量に取り出している。私がそれを止める前に彼は一気に口の中に入れて飲み込んでいた。

興奮気味になり、高笑いしている彼は既に壊れているように見えた。ピンク色の髪が美しく鮮やかだったからか、花が狂い咲いているように見える。

……私も、既に狂っているのかも。この状況で、彼に殺されるならそれでいい、なんて思ってしまっているのだから。

あれだけ死ぬ事を怖がっていたのに。いざ、好きな人の手で殺められてしまうかもしれないと考えると、案外悪くない結末なんじゃないかって。

「明日、この家から出てけ。」

……お別れなんだ。いつかは来ると、片隅で覚悟していたはずなのに……。最初は一刻も早く、彼の気まぐれが終わりを訪れないかと思っていたのに。

どうして、私の気持ちに蓋を出来なくなってしまった、手遅れの今……私に告げたんだろう。

これ以上に酷な事はなかった。誰かと一緒にいて楽しかった事、振り回されても許せてしまう事、なかったから。

こんな沢山の感情を知った後に、離れたくなかったよ。もっと前に……自覚する前に言ってくれていれば、こんなに苦しい思いしなくてよかったのに。

「春くん……私、」

「数回ヤった程度で俺の女気取りだったんじゃねえよな?」

嘲笑ったような表情で私の言葉を遮った彼。……そうだよね。全ては春くんの気まぐれだった。

私が恋情を芽生えさせて育んでいた時に、彼が育んでいたのは恋情でもなく、愛情でもなく、劣情だけだった。

私達の間には、「恋」も「愛」も何もなかった。そんな事、最初からわかっていたはずなのに。

勝手に私が好きになって期待して、育てた大きな感情。それを裏切った、なんて責める事は私には出来なかった。むしろ……勝手に期待して、傲慢になっていた私への報いなのかもしれない。

「お前には、飽きたし……前に言っていた男も探して捕まえた。その全てを含めてどういう事かわかるよな?」

俺の前から失せろ、って事をきっと言いたいのだろう。

「もうお前なんて用済みなんだよ。」

「……そっか。」

その一言しか出てこなかった。泣いて縋りついたとしても、きっと彼に情けはないだろうから。未練があるのは私だけ。だから……ちゃんとさよならを言わないと。

今夜が、三途春千夜という大好きな彼を共に一夜を過ごせる苦くて不幸せな最後の夜になる。

45 こんなはずじゃなかった→←43 嘘だと言って。



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設定タグ:東京リベンジャーズ , 東リベ , 三途春千夜   
作品ジャンル:アニメ
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モック - 完結おめでとうございます!物語中の春千夜君がかなりヤバくて(語彙力www)最高でした! 応援してます! (2022年9月24日 10時) (レス) @page50 id: 17f5259717 (このIDを非表示/違反報告)
さきな。(プロフ) - 来夢さん» コメントありがとうございます!本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。大変恐縮です……!これからも面白いと思って頂ける作品が書けたらと思います! (2022年2月19日 0時) (レス) id: 74c94643cf (このIDを非表示/違反報告)
来夢(プロフ) - 完結おめでとうございます、そしてお疲れ様でした🙇♂とても最高でした!私にはこんな神作作れないので羨ましい限りです😭あ、作者様の春千夜くんドタイプでした!これからもずっと応援させて頂きますので、よろしくお願い致します🤲 (2022年2月15日 3時) (レス) id: e2197c2b6d (このIDを非表示/違反報告)
さきな。(プロフ) - 楸さん» コメントありがとうございます。自分にとっても楽しくかけた小説でした♪スランプに陥って書いては消してを繰り返しておりますが、自分の納得した作品が出来て書き続けられたらまた別作品を見ていただけたらと思います。 (2022年2月14日 1時) (レス) id: 74c94643cf (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 完結おめでとうございます!!マジで最後の方はあ゛あ゛泣って感じで一人で焦ってたんですけど、あらぁ!!って終わり方でもう兎に角大好きです!!語彙力が行方不明になるくらい素敵な作品ありがとうございました!! (2022年2月14日 1時) (レス) id: 94f21122e4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さきな。 | 作成日時:2021年12月12日 0時

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