22 それはちょっと ページ23
「こんなん出来る訳ねえだろ!スクラップしてやる!」
「短気すぎません!?止めてください!」
まさかピーラーで皮を剥けないなんて……って言ったらブチ切れられそうで言えない。小さくなってしまったジャガイモだけど、これはこれで良いと思う。
だって、一生懸命やってくれた。それが何よりも私は嬉しかった。
「笑ってんじゃねえよ!」
「バカにしてる訳じゃないですよ!手伝ってくれるって言ってくれて嬉しかったです。」
「……もう手伝わねえ。出来るまで寝る。」
素っ気なく背中を向けてソファに行ってしまった。でも皮を剥いてくれたおかげでそのまま次の作業に取り掛かれたから助かった。後でまたお礼を言わなくちゃ。
机に出来た料理を並べていると、眠たそうに目を擦りながらタイミングよく起きてくる春さん。椅子に座って大欠伸をすると食べ始める。
「あの、春さん。」
「……あ?」
「とても言い難いのですが、食べる前には「いただきます」って言ってください。」
「は?」
「折角一緒に作ったし、やっぱり「いただきます」って言うのはマナーなので。」
ずっと気になってたマナーの指摘をついにしてしまった。不機嫌になってしまうかもしれないけれど、誰も言わないなら私が言う。
「……わかったよ。」
「え?」
「次から言えばいいんだろ。」
素直な春さんなんて春さんじゃない。何の心境の変化なのだろうか。でも、面倒くさそうにしながらも私の話に耳を傾けてくれるようになったという事は少しは私に心を開いてくれたという事でいいのだろう。
食べ終わると春さんは「ごちそうさまでした。」と小さい声で言ってくれる。私もそれに倣い挨拶をした。
シンクに置かれたお皿を洗い終えて、お風呂に入る準備をする。
「風呂、入んのか?」
「そのつもりです。あ、もしかして入ろうとしてましたか?じゃあ、先に入ってください。」
「……別に一緒でいいだろ。」
「え、それはちょっと……。付き合ってもないし。」
やんわりと断ると春さんは私に近づいてきて、抱き寄せるように背中に腕を回していた。
「女子高生みたいな事言ってんじゃねえぞ。早く行くぞ。」
強制的に浴室に連行されてしまい、一緒に入る流れになってしまった。躊躇もなくさっさと脱いで中へと入っていく春さんと躊躇しかなくて脱ぐのに時間をかけてしまう私。
中からシャワーの音が聞こえるたびに、私の胸は高鳴っていた。
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モック - 完結おめでとうございます!物語中の春千夜君がかなりヤバくて(語彙力www)最高でした! 応援してます! (2022年9月24日 10時) (レス) @page50 id: 17f5259717 (このIDを非表示/違反報告)
さきな。(プロフ) - 来夢さん» コメントありがとうございます!本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。大変恐縮です……!これからも面白いと思って頂ける作品が書けたらと思います! (2022年2月19日 0時) (レス) id: 74c94643cf (このIDを非表示/違反報告)
来夢(プロフ) - 完結おめでとうございます、そしてお疲れ様でした🙇♂とても最高でした!私にはこんな神作作れないので羨ましい限りです😭あ、作者様の春千夜くんドタイプでした!これからもずっと応援させて頂きますので、よろしくお願い致します🤲 (2022年2月15日 3時) (レス) id: e2197c2b6d (このIDを非表示/違反報告)
さきな。(プロフ) - 楸さん» コメントありがとうございます。自分にとっても楽しくかけた小説でした♪スランプに陥って書いては消してを繰り返しておりますが、自分の納得した作品が出来て書き続けられたらまた別作品を見ていただけたらと思います。 (2022年2月14日 1時) (レス) id: 74c94643cf (このIDを非表示/違反報告)
楸(プロフ) - 完結おめでとうございます!!マジで最後の方はあ゛あ゛泣って感じで一人で焦ってたんですけど、あらぁ!!って終わり方でもう兎に角大好きです!!語彙力が行方不明になるくらい素敵な作品ありがとうございました!! (2022年2月14日 1時) (レス) id: 94f21122e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2021年12月12日 0時