甘いお気に入り【藤原樹】 (ページ2)

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＃02 ページ2

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「おい立てよ」

さっきと違った荒い口調にビクリと身体が震える。

男の子の瞳は笑ってない。

私はこれから起こることへの恐怖で涙を浮かべた。

もう逃げられないっ･･･

男の子の顔が近づいてきて、私はギュッと目を閉じた。

･･･あれ？

きつく目を閉じて覚悟を決めたというのに、さっきから待っていても何も起こらない。

目を瞑っているせいで何も見えないけど

明らかにさっきと空気が違う。

目、開けても平気？

そういえば手が軽くなった気がするんだけど･･･

ソッと目を開けて、私は唖然とした。

だって･･･

『･･･藤原、くん？』

藤原「あ、Aちゃん大丈夫？」

そう振り返ったのは、黒髪のかきあげられた前髪に

長くて多い睫毛、三白眼の瞳、鼻筋が通った綺麗な男の子。

平然と私を見ている藤原くんの手はグー。

つまり拳を握りしめ、その行動とは不釣り合いな人懐っこい笑みを浮かべて私を見た。

え、いや「大丈夫？」じゃないでしょ。

『ふ、藤原くんこそ･･･』

藤原「俺は平気。

ちょっと向こうむいてて、Aちゃん」

『え？なんで？』

藤原「何でって、今からコイツ殴るから」

握った拳の逆の手に目を落とすと

さっき私に詰め寄った男の子のシャツを襟を握っていた。

そっか、殴るんだ。

･･････って、殴る！？

『ちょっ、ちょっと藤原くん何してるの！！』

私は慌ててその手を止めた。

藤原「ちょっと殴るだけだよ」

無表情のまま藤原くんは言った。

殴ったりしたらその人怪我しちゃうじゃん！

しかも、

『なんで藤原君がその人殴るの！？』

藤原「･･･へぇ。

Aちゃんはコイツかばうんだ」

明らかに不機嫌になった藤原くん。

『か、かばってるわけじゃ･･･』

って、何で言い訳しようとしてるの？

別に藤原くんにどう思われたっていいはずなのに･･･

そうだ、人として思ってるんだ。

ただ人として殴るのを止めてるだけ。

出来れば私だってこの人懲らしめてほしいよ。

怖い思いしたのは本当だもん。

だけど･･･

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