10 まだ歯の立て方もしらない ページ4
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「……嘘、なんでここに…!」
路地を曲がり、アパートが視界に入る頃。
部屋の前にスーツの男性が何人か立っており、一階には見覚えのある車。…きっと二階堂さんだろう。
それにしても、タイミングがいいんだか悪いんだか。
あの時イトカンに居なかったらと思うとぞっとするけど、今は今で危険。
暫く様子を伺っているうちに、車の中から二階堂さんが出てきたのを確認した。
その道とは思えないくらい綺麗な身なりをした二階堂さんは階段を上がり部屋の前に立つと、何やら手元を動かしているのが見えた。
少し距離がある為、何をしているのかはよく見えない。
「まさか鍵…?」
家の鍵は勿論お兄ちゃんも持っている。
だとしたら部屋の鍵を開けるくらい、容易な事だろう。
そして部屋のドアが開いた瞬間、心臓のあたりがサッと冷え込むのを感じた。
…なんて人達なの。
アパートから視界を逸らし、路地の壁に背中を預け深呼吸をした。
取り敢えずあの人達が居なくなるまで、息を潜め……………………
「… 、 …… あ」
「…あ?」
誰かと電話をしながら路地へと入ってきたのは、見覚えのある顔だった。
しかし誰なのかを思い出すより先に目に入った胸元のバッジに、まるで身体に電流が走るような感覚に浸る。
「っ、!!」
「ックソ、オイ!待てや!!」
ああもう、どうしてこうなるの!
とにかく一心不乱に走り回って、路地を抜け、商店街への道を行き、確かな記憶を辿りながら町中を駆け巡った。
後ろからは怒鳴り声と複数の足音が聞こえてくる。
胸を握り締めながらあちこちの道を抜け、塀を登り足音が通り過ぎるのをただひたすら待った。
ここがどこなのかもわからない。
ただ、隠れるのに必死で、見つかるのが怖い。それだけだった。
『…震えてるや』
息を整えながら、がたつく足を押さえつけるように握る。
遠くの方であの人達の声が聞こえる。
下手に出て鉢合わせでもしたらおしまいだろう。
だからその前に、……
…
…どうするつもりなんだろう、私。
夜までここに隠れている?
リスクを冒してまで行く場所なんてありはしない。
どこに、行けば。
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スイ(プロフ) - 主人公の心情の表現など、好きです!大変かとは思いますが、更新お願いします! (2018年6月5日 9時) (レス) id: 2d04120347 (このIDを非表示/違反報告)
理桜(プロフ) - 日向かっこいい!更新楽しみにしてます!! (2017年10月23日 1時) (レス) id: 0dad446c14 (このIDを非表示/違反報告)
スフィンクス(プロフ) - 日向さんまじかっけー!最&高! (2017年9月14日 23時) (レス) id: a701b75e64 (このIDを非表示/違反報告)
えく(プロフ) - yuuyuuさん» ありがとうございます!頑張ります〜〜! (2017年9月14日 0時) (レス) id: 4af89cc856 (このIDを非表示/違反報告)
えく(プロフ) - 青龍 葵さん» コブラや雨宮兄弟は多いですよね…!どちらも好きなので多いのは嬉しいことです^ ^コメントありがとうございました!のんびり更新ですが楽しみにして頂ければ幸いです。 (2017年9月14日 0時) (レス) id: 4af89cc856 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えく | 作成日時:2017年9月5日 12時