【HiGH&LOW】溺 愛 衝 動 。【日向紀久】

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テレビも、ラジオも、新聞もない。
外の情報が遮断されているというのは、いくらこの環境になれつつあっても落ち着かないものだった。
九龍が動き出している時点でお察しだけど、恐らくSWORDは今良くない状況にある。

…お兄ちゃんは、無事だろうか。

今どこで何をしているんだろう。

普通なら捜索願いが出されて、警察が動くのだろうけど、兄達の事だ。散々お世話になった腐れ縁の警察を頼るなんて事はきっとしないだろう。

そもそも、自分でもここがどこなのかがよく分かっていなかった。


山の中なのは分かる。

家村会の人らが車でやって来たり、アメ車で飛び出して行く達磨の人達を見る限り、そう深い場所にある訳でも無さそうだ。



この日、私ははじめて日向さんから「おつかい」を頼まれていた。

そして何故か日向さんは私の財布を持っていて、「無駄遣いすんなよ」と一時的に返してくれた。
…何故家に置いていた財布が日向さんの手元にあるのかは、考えるのをやめた。

そういえばおつかいを頼まれる時、店への行き方を書いたメモ用紙も一緒に渡されていたのを思い出し、乱雑に床へ放り投げられたくしゃくしゃの5000円札とメモ用紙へ手を伸ばした。


暗くてよく見えない。

明かりを求めて外の光が入り込む縁側へと向かうと、バタンと車のドアが閉じる音が聞こえてくる。
はっとして音の方向を見ると、車から出て来たのは二階堂さんだった。

…わざと日向さん達が居ない時にやって来るのが、怖くて仕方がない。



「…こんにちは」


「貴方は本当に父親に似てきた」


「ご用件は」


「町の方まで送迎してあげますよ」


「送迎…って……
いえ、お気遣いなく。一人で行けます」


まるで私が町へ出るのを知っていたような言い方だ、と思っていると、案の定二階堂さんは続けて言った。


「日向からの頼みです。
こっぴどく脅されたのでね…連れ去ったりなどしませんよ」


「…日向さんの？」

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