プロローグ ページ2
草木も眠る丑三つ時。
満月は雲に隠れ、東京の街は夜の闇に沈んでいる。
深く寝静まった街を一人の少女が走る。
何故か現代の世にはそぐわない日本刀を手に持ち、屋根から屋根へ常識では考えられないほどの速さで飛び移っていく。
少女はなにかを追っている。人では無い。
人は手を四本も持たないし、つのなど生えていない。
その化け物は焦ったように少女を振り仰ぐと、走る速度を上げた。
少女と化け物の距離が離れ、化け物は勝利の笑みを浮かべる。
少女は不愉快そうに顔をしかめ、ひとつ舌打ちをした。
次の瞬間、少女の姿が消え、化け物の腕が宙を飛ぶ。
奇妙なほど紅い鮮血が噴き出し、辺りを紅く染める。
軽い音をたてて化け物の前に降り立った少女は、刀についた血を払うと再び刀を構え、屋根を蹴った。
氷の呼吸 壱の型 氷面の煌めき
少女の刀が閃くのと同時に、化け物の頸がずるりと音をたてて滑り落ちる。
突然、雲が流れ、隠れていた満月が顔を出した。
銀色の月あかりが少女を照らす。
高い位置でひとつに束ねた黒髪は月あかりに美しく輝き、漆黒の瞳はあでやかに光っている。
その頬についた返り血が、陶器のようになめらかな肌の白さを際立たせる。
少女は美しかった。恐ろしいほどに完璧なその美貌は、月あかりの下で冷たさと妖艶さをかもしだしていた。
少女は己が斬った化け物を無表情に見下ろす。
化け物は苦悶の声を上げていたが、やがて力尽き、細かい塵となって消えていった。
化け物が完全に消えると少女はほっと息をつく。
どこからともなく一羽の烏が飛んできて、肩にとまる。
少女は優しく烏を撫でると、静かに姿を消した。
近頃、日本のいたるところでまことしやかに語られている噂がある。
――夜になると活動を始める"人喰い鬼"を、"鬼殺隊"の隊士が倒してくれる――
突拍子もない噂である。そもそも人を喰う鬼など、空想の産物だ。
だが、この噂はまたたく間に広がり、今では知らぬ人などいない有名な噂となった。
"鬼殺隊"は噂を信じる若い人たちを中心に崇められ、神格化している。
一方で、ありえないと馬鹿にしている人たちも一定数いる。
この噂は、嘘か真か。
満月はただ、深夜の街を照らしている。
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碧月(プロフ) - ものすごく、ですと……!?ありがとうございます!!頑張って更新していきますのでよろしくお願いします!! (2022年10月17日 1時) (レス) id: 68ee274034 (このIDを非表示/違反報告)
七星 麗華 - 碧月さん» ものすごく面白かったです。更新するのを待っています! (2022年10月15日 20時) (レス) @page21 id: 50853c9852 (このIDを非表示/違反報告)
碧月(プロフ) - 椿さん» 返信遅くなってすみません!! 面白いと言ってもらえるととても嬉しいです!! 更新遅くて申し訳ないです……できる限り早く更新していきたいと思っています。気長に待っていただけたらありがたいです。 (2022年10月14日 0時) (レス) id: 68ee274034 (このIDを非表示/違反報告)
碧月(プロフ) - 和南さん» 返信遅くなってすみません!! ご指摘ありがとうございます。よりにもよってキャラの名前を間違えてしまうとは……申し訳ないです。誤字脱字が無いよう頑張っていきますが、もし見つけたら報告してくださると嬉しいです! (2022年10月14日 0時) (レス) id: 68ee274034 (このIDを非表示/違反報告)
椿 - とても面白いです!更新頑張ってください!応援します! (2022年7月28日 10時) (レス) @page19 id: 3764804c56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:碧月 x他1人 | 作成日時:2021年9月9日 15時