心・躰 (ページ47)

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K「絶対、9時前に帰るって決めてたから！」
悪びれもせずにそう言ってへらりと笑う。

「予定より随分遅かったけど、どうしたの？」

ヘラヘラする北山にムッとして、少し冷たい口調で言う。

K「あ…、うん。悪い。本当はもっと早く帰るつもりだったんだけど…」

北山によるとレギュラー番組の収録後、打ち合わせに行ったスタジオで昔お世話になったスタッフさんに偶然会って、話がえらい盛り上がってそのまま飲みに行ってしまったらしい。

K「藤ヶ谷も覚えてるでしょ？Jr.の時に…」

覚えてるよ。知ってるよ。でもそれよりさぁ、、

「連絡くらいしてよっ！心配するじゃんっ！！」

K「…っご、ごめん。何かサシだったから、スマホ触り辛らくて…」

上目遣いで俺を見つめて、申し訳なさそうに謝ってくる。

チッ…その顔、本当ズルイよね？
俺がその顔に弱いの知っててやってんの？

「・・・・・。」

K「ふっ、藤ヶ谷！オレ速攻で風呂入って来る！遅くなっちゃたけど、少しはゆっくりできるかな？」

気まずい沈黙に慌てて北山が話し出す。

えっ…？ゆっくり…？

…よく考えてみたら、まだ9時じゃん！？
こんな時間に二人で家にいるの久し振りだよね？

ゆっくり…に身体が反応する。
ここ最近恋人らしい事もずっとしていない。

「北山、明日は朝早いの？」

セカセカと動こうとする北山に話しかける。

K「うん。朝イチだけど、昼で仕事終わり…」

朝早いのにはガッカリしたけど、仕事が午前中で終わるって聞いて気持ちが上がる。

「俺も明日3時頃には仕事終わるから、どこか出かけない？」

この前の…あの海でもいいよ？

そう言いかけた時…

K「藤ヶ谷…悪い。明日さぁ、ちょっと予定入れちゃって」

「・・・・・！！」

はあっ…？！また…？
上がっていた気持ちが急降下する。

「何…？誰と…？」

K「あ、その、おーくら？」

「・・・・・っ」

K「帰りのタクシーでさ、LINE来て。明日会おうって…」

今一番聞きたくなかった名前かも…。
北山の口から暫く出てこなかったから安心してた。
よりによって何で今日なんだ？
こんな不安な気持ちの時に…。

北山の俺に対する気持ちがわからない。
俺はいつでも北山が最優先だけど、北山は違う…。

K「最近引っ越しとかで忙しくて、アイツからの誘いずっと断ってたから…たまにはフォローしとかないとさ…」

フォロー…。フォローって何？

何だか無性に腹が立ってきて、震える両手をギュッと握り締めた。