心・躰 (ページ37)

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K ページ37

…待たせてごめん…。

その言葉に驚いたのか、まだ涙の残る瞳を大きく見開く。

「もう泣くな…」

そう言って頭をポンポンと叩き、ニコリと笑うオレを複雑な顔で見下ろす。

…藤ヶ谷の事、ずっと傷つけてた。

いつも逃げてばかりで、目の前の事に向き合おうとしないオレを、どんな気持ちで見ていたんだろう？

…自分勝手でごめん。我儘でごめん。口ばかりでごめん。
もっと沢山あるけど…。

オレ…本当…馬鹿でごめん…。

黙ったまま動かない藤ヶ谷に、思いきり抱きつく。
胸に顔を寄せると、さっき聞いた心臓の音を思い出す。
あんなに緊張して、怖くて不安だったよな…。
背中に手を回し、まだ震える身体をなだめる様にさする。

F「…どうして…」

絞り出すような掠れた声が聞こえて、顔を上げる。

「え…」

F「…本当は断るつもりだったでしょ？」

「・・・・・。」

F「どうして気が変わったの？…俺が泣いたから？
同情してんの？」

「…同情なんかしてない」

F「じゃあ…どうして？」

「それは…」

波の音が聞こえたから…。

そんな理由だったら怒るかな？海のパワーなんてとても言える雰囲気じゃない。

藤ヶ谷は信じてくれないだろうけど、オレはあの時「一緒に住みたい」って言うつもりだった。

確かにすごく迷ったし、正直「今のままで…」って言いそうになった。

…でもその時、近くで波の音がして…。

何度も繰り返すその音を聞いていたら、取り乱していた気持ちがだんだんと落ち着いて、冷静になる事ができた。

どんなにリスクが高くても、それでもオレを求めてくれる藤ヶ谷の事を思ったら、
周りを気にしたり、起こるかどうかも分からない先の事を心配している自分がとても情けなくなった。

「…な…」

F「な…。何？」

「…な…んでもない…。オレ…最初からOKするつもりだったし？」

F「……うそつき…」

「っ嘘じゃねぇし！…さっきも言ったろう？ずっと一緒にいたいって。離れたくないって…」

F「・・・・・。」

「…それにオレ…お前じゃないと駄目だから…」

F「…！！……フフッ…そっか…。
はぁ…北山…やらしい…。本当にえろいよね？
…まぁ、北山の全部を好きにできるの、俺だけだから？」

「・・・・・！！」

…お前の言い方のほうがやらしーんだよ！
オレは精神面の事を言ってんの！

少し呆れながらも藤ヶ谷が笑ってくれて安心する。

一方的に抱き着いていただけの身体は、いつの間にか強く抱き締められていた…。