心・躰 (ページ29)

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それ以来、北山と一緒に住む話はしていない…。
明確な理由も聞かず、結局うやむやのまま過ごしている。

断られて落ち込んでると思われたくなかったし、変に気を使われるのも嫌だった。
何よりこの事が原因で、二人の仲が拗れるのはもっと嫌だった。

別に大した事じゃない…。

そう何度も自分に言い聞かせて、後ろめたさを感じている北山の為にも、この話題は避けてきた。

…北山の為…。
そうやって言えば、聞こえは良いけれど、
実際は、自分がまた傷つくのが怖かった…。
北山の口から直接理由を聞く勇気が、その時の俺にはなかった…。

あれから一年以上…。
今なら…あの時泣きそうな顔で俯いていた北山の気持ちが、少しは理解できる…。
二人が一緒に住むと言う事は、自分達だけの問題ではない。もしバレたら、メンバーを始め多くの人に迷惑をかけてしまう。
きっと北山はキスマイの最年長として、事務所やグループの将来を第一に考えたんだろう…。

ねぇ、北山？
もし今また俺が「一緒に住もう」って言ったらOKしてくれる？

俺、結構ゆっくりしたつもりだけど…。

…無理だよね…
一連の自分の行動を思い出す。

今日だってムリやり連れて来ちゃったし…。
さっきは怒らせちゃったし…。

『独り善がり…』
渉の言葉が頭に浮かぶ…。

「・・・・・。」

結局俺…何も変わってない。
自分の気持ち北山に押し付けてばかり…。

「はぁ…」

北山には聞こえない様、小さくため息を漏らす…。

ふと気がつけば、北山が少し前屈みになって、俺のスマホから流れる曲に耳を傾けている。

唇が微かに動いて、その曲を口ずさんでいる。

あ…この曲…。

K「これ、いい曲だなぁ…」
優しく微笑むその顔に、ホッと胸をなで下ろす。

良かった…機嫌直ってる…。

「うん、イイよね。俺も好き…」

自分もつい最近知った曲だけど、きっと北山も気に入ると思ったんだ。

K「いいなぁ…。カッコイイ。オレもスマホに入れようっ」

カバンを膝に乗せ、手を突っ込んでゴソゴソとスマホを探している。

K「なぁ、藤ヶ谷…」

カバンの中に目を向けたままで、北山が言う。

「ん…？」