心・躰 (ページ27)

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…前に、一度だけ言ったことがある…。

『ねぇ…北山…。一緒に住まない…？』

付き合って、一年目の記念日…。
北山が家に来てくれて…。
沢山愛し合って…。

甘い空気が残る寝室…。
俺の下でまだ呼吸の荒い北山の、汗ばむ背中にそっと口付ける…。

『北山…』

今にも寝落ちしてしまいそうな北山に、優しく呼びかける。
『ん…』と微かに返事をするけれど、瞼がもう閉じそう…。
柔らかい髪を耳に掛ければ、俺がさっき一周年の記念に…と贈ったピアスが光っている。
その耳元に唇を寄せ、『一緒に住もう…？』と囁いた。

その時の北山の表情を、今でもはっきり覚えてる。
嬉しい様な…。困った様な…。
閉じそうだった瞼は、いつの間にかパッチリと開いて、戸惑った表情で俺を見上げている。

K『…ふじがや…』

何かを言いかけた北山の赤く腫れた唇に、ちゅっとキスをする…。

『返事は今度会った時でいいよ…。考えてみて？』

自分の中の不安を取り除きたくて、俺は焦っていたのかもしれない。
一緒に住めば、北山の全てが手に入る訳じゃないけど…。
北山に対する独占欲や嫉妬、そんな感情から俺は早く解放されたかった…。

二人の関係は良好だったし、お互いの家の合い鍵も、交換していた。
何より俺には自信があった。
北山も絶対、同じ気持ちだって…。

だから…。
まさか断られるなんて、思っても見なかった…。

早く返事が聞きたくて、二日後の収録日、俺は北山を家まで迎えに行った。
早速、助手席に座る北山に、この間の返事の催促をする…。

K『…ごめん…藤ヶ谷…。今のままが良いんだ…』

眉を下げて、申し訳なさそうに告げる言葉に声が出ない…。

…なんで…。どうして…？

本当は、すぐにでも車を路肩に止めて問いただしたかった…。
けど…そんな事できるはずもなく…。

『…いいよ…。気にしないで？思いつきで言ってみただけだから…』

何でもない事の様に、笑顔で返した…。