許嫁を迎えに行きます【2】 (ページ33)

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『んー美味しい』

「めちゃうま！」

美味しいものを食べるとき
好きな人と食べるのが1番美味しい。

優しい笑顔でふわっとした
柔らかい声で笑う

笑うと頬にできるえくぼができる。

そこに指を突っ込むのがマイムーブ

でも机を挟んで座る彼女は
指を突っ込むにはあまりにも遠い。

「つっこみてぇ〜」

『また言ってる〜』

　

そう言って両頬を隠す

「後で触らせて」

『なんで〜』

「いいじゃん」

　

そんな何気ない普通のカップルみたいな
やりとりが俺の胸をあたためる。

仕事で嫌なことがあっても
彼女の声を聞いて彼女の笑顔を見れば
それだけでよかった。

それだけで幸せだった。

「ね！触らせて」

ご飯を食べ終わって珈琲をのみながら
そう彼女に伝える。

『なーんで！やだ』

そう言いながらまたえくぼをつくる。

すきなんだ。

邪険にしないでくれ

それだけで幸せなんだ。

そんな毎日が
Aとの何気ない生活が続いて
すっかりAが隣にいるのが当たり前になっていた。

Aといると

仕事でもいろんなことがあっても

不の感情が指の間をするすると

抜けていって幸せという感情だけが

俺の指に絡まるんだ。

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