一日前 退治 ページ34
「勿論です。あなた方からも話を聞く必要があります」
「だから、何を話すんです」
苛立ったように久保山さんが急かした。その時、自信満々な表情の中にこちらを探るような感情が隠されていることに気づく。
「率直に言いますと...あの事件の真犯人はあなたですね?久保山さん」
動機が十分にある彼は、自分を疑うようなセリフをこれまで何度も聞いてきただろう。だからなのか、さほど動揺する様子が無い。
「警察の捜査で、犯人は秘書の高田となっていたのでは?」
ちょうど犯行日に彼女が早退した、彼女の家から凶器が出てきた、などと得意げに高田さんが犯人であるに違いないとぺらぺらと話す。
「目撃情報もあったらしいですし」
まだあの受付の心を掴んでいると思っているのだろう。まさか裏切るはずがない、といった感情が見て取れる。
「...ああ。その件ですが、受付の方本人からあれは嘘だったと証言をいただきました」
瞬間、久保山さんの目が見開かれた。ダン!と勢いよく目の前の机を拳で叩く。
「あいつ...!!裏切ったな!!」
「裏切ったも何も、初めから彼女は快く協力しようという様子でしたか?」
悔しそうに唇を嚙みしめる彼は何も言えないようだ。
案外あっけなかったな...もっと時間がかかるかと思ったのだが。
「ところで、検事さんと弁護士さん。あなた方は久保山さんからお金を貰っていたんでしょう?」
こちらも簡単に表情を崩した。
「なっ!何を言い出すんです!」
「所謂、賄賂ってやつですね」
「私たちは別に___」
言いかけたところでまたしても久保山さんに睨まれ、口を閉じた。お前たちだけ逃げるつもりか、と言いたげな彼の視線は2人の弁解を許さない。
「久保山さんの計画は爪が甘くて危うかった。それなのに今まで真実がはっきりしなかったのは...あなた方が、真相に辿り着かないように捜査をしていたからですね」
高田さんの家の合鍵を作って侵入する。そして食べ物に薬を混ぜる。包丁を盗む、返す。しかも会議がある日に体調が悪くなったことを確認して、動く...
やたら計画は練ってあるが、何かのタイミングがずれてしまうと失敗に終わるであろう不安定さ。これまで真相が発覚しなかったなんて、どんなトリックだろうと思っていたが、わかってみると簡単なことだった。
「出張から帰ってきたのは、裁判を見届けるためでしょうか?安心するつもりだったようですが、仇になりましたね」
もう顔を上げている者はいなかった。
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かまぼこ板(プロフ) - かなとさん» いつも本当にありがとうございます!これからはまた前のようなペースでやっていきたいと思います、よろしくお願いします! (2016年6月30日 0時) (レス) id: 8b9d5f2ddb (このIDを非表示/違反報告)
かなと(プロフ) - お久しぶりですね。他の方たちもぱったりと更新されなくて寂しかったんですよ。有難う御座いますと此れからも宜しくお願いします。 (2016年6月28日 23時) (レス) id: 5c59d46582 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこ板(プロフ) - かなとさん» 安室さんがこんな感じだったらいいなあという私得な展開でした...!そう言っていただけてよかったです! (2016年6月12日 23時) (レス) id: 8b9d5f2ddb (このIDを非表示/違反報告)
かなと(プロフ) - 安室さんカワ(・∀・)イイ!! (2016年6月12日 0時) (レス) id: 5c59d46582 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこ板(プロフ) - 106さん» コメントありがとうございます!そんなことを言っていただきうれしいです!がんばります! (2016年6月12日 0時) (レス) id: ab8133160c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かまぼこ板 | 作成日時:2016年5月21日 23時