一日前 対峙 ページ33
“父さんの親友の人とその奥さんがすごくいい人でね。私と母さんをずっと励ましてくれてて”
高田さんの父親の死について、初めて詳しく聞いたときに高田さんが口にした言葉。本当の家族のことを語っているかのような、穏やかな表情だった。
“私ね、高卒で働こうと思ってたんだけどこの前、大学まで卒業しておきなさいって言われてさあ。”
娘が父親の言い分に納得していない、そんな雰囲気のむくれた顔。でも自分もそう思えたのか、その後まんざらでもなさそうにくすっと笑った。
“秘書の仕事手伝わせてもらってたんだけど、大学卒業したらそのまま秘書として働かないかって!”
いつになくはしゃいで報告してくれた。
自分が犯人とされていることを話していたときは、唇を嚙みしめて本当に悔しそうに涙を流していた。
久保山社長の話をする時の口調にはいつも、彼に対する敬意が込められていて。
それを見続けてきた立場の人間である僕にとって、目の前にいる真犯人は許すことのできない存在だった。
高田さんの気持ちを蔑ろにし、罪をなすりつけた真犯人。
その真犯人はというと、先日まで自分の父親が座っていた回転椅子に、我が物顔でふんり返って座っている。まるで自分の居場所はそこであると思い込んでおり、その状況が崩れる危うさは感じていないようだ。率直に言えば、自分が捕まることなどないと自信満々だった。
いや、正確には犯人たち、か。
「今さら探偵が何の用でしょう?」
確かに今となっては、証拠と言える証言があるのだから、別に警察に任せても片はついただろう。しかしこの犯人は、こいつだけはどうしても自分の手で捕まえたかった。
最終的に「毛利探偵の手伝いをしていた安室透」が、「事件解決へのヒントを掴んだ」という形にもっていけば問題は無いのだ。
「いえ...あの事件について久保山さん、あなたと話をしたいと思いまして」
数日前___事件の話を聞く前までは、久保山社長夫妻に息子がいるなんて知りもしなかった。それからいくと、高田さんも入社するまで存在は知っていても、会ったことが無かったのかもしれない。
「それなのに私どもも必要でしょうか...?」
正確には僕は3人を前にしていた。そのうちの一人___久保山さんの右側に立つこの事件の検事が声を上げた。その瞬間、久保山さんがその検事をギロリと鋭く睨んだ。
私ども、と一まとめにされた高田さんの弁護士も検事に同意するように激しく頷いた。
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かまぼこ板(プロフ) - かなとさん» いつも本当にありがとうございます!これからはまた前のようなペースでやっていきたいと思います、よろしくお願いします! (2016年6月30日 0時) (レス) id: 8b9d5f2ddb (このIDを非表示/違反報告)
かなと(プロフ) - お久しぶりですね。他の方たちもぱったりと更新されなくて寂しかったんですよ。有難う御座いますと此れからも宜しくお願いします。 (2016年6月28日 23時) (レス) id: 5c59d46582 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこ板(プロフ) - かなとさん» 安室さんがこんな感じだったらいいなあという私得な展開でした...!そう言っていただけてよかったです! (2016年6月12日 23時) (レス) id: 8b9d5f2ddb (このIDを非表示/違反報告)
かなと(プロフ) - 安室さんカワ(・∀・)イイ!! (2016年6月12日 0時) (レス) id: 5c59d46582 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこ板(プロフ) - 106さん» コメントありがとうございます!そんなことを言っていただきうれしいです!がんばります! (2016年6月12日 0時) (レス) id: ab8133160c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かまぼこ板 | 作成日時:2016年5月21日 23時