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家の外に出ると、辺りは静まり返っていた。当然閑静な住宅街に人通りはない。
「で、どこを探しにいくの」
「まだ遠くまで行ってないはずだから、この辺りをとりあえず周ってみよう」
そう言って角名くんは左手を差し出した。私がその意味を理解できないでいると、
「夜道は危ないから。《手をつなごう》」
と付け加えた。
ただのクラスメイトで、なんでもないはずなのに。
私は脳漿に優しく響くその言葉を聞くと、まるで磁石に引き寄せられているかのように、無意識のうちに右手を差し出してしまう。その手をしっかりと握られて、耳朶に熱が集まった。
「もうすぐ丑の刻だから、何がいるかわからないしこうしてた方がはぐれなくて済むね」
「何がいるかわからないって、幽霊でもいるの？」
「似たようなのはいるかもね」
「冗談でも笑えないよ……」
揶揄うような口ぶりで話す角名くんの顔が、気恥ずかしさで上手く見られなくて、視線をアスファルトの地面の上に落とした。背丈の違う影が二つ。ゆらゆらと映っている。
「その狐火、どこを探せばいいの？」
「強い光のないところ……少し街灯の少ないところを見に行こう」
夏なのに少し冷えていてそれですっぽり私の手を包んでしまうような大きな手で引かれて、路地裏の角を曲がる。人がすれ違うのも一苦労な細い道を、彼は特に臆することなくひょいひょいと入っていく。
暗闇の中から今にも何かが飛び出してきそうで、私は少し足を止めて訊ねる。
「いそう？」
「多分近いと思う。もう少し先に行こう」
「ええ、でも……」
「怖い？」
私の躊躇を見透かしたように、角名くんは立ち止まると私の方を振り返った。後ろめたさを煽る鈴虫の鳴き声が遠い。
「……ちょっとだけ」
「そっか、じゃあ早く見つけて送り返しに行こう。帰りも送っていくからさ」
「え、見つけたら終わりじゃないの？」
私はてっきり狐火を見つけたら帰れるものだと思っていたので、少し不満を含んだ声を上げてしまう。
「本当はそうしたいところなんだけど、あんまり時間がないんだよね。狐火は夜のうちに送り返しに行かないといけないし」
「送り返しにって、どこで？」
「少しここから歩くけど、そう遠くはないよ。稲荷神社のところ」
「あそこで？」
私はそこで歩いて10分ほどの距離に、稲荷神社が森の孤島のように建てられているのを思い出した。昼間でも光を通さないあの木々の中を、この夜に進むのは不安でしかない。そんな考えが頭をもたげた。
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［ハコナカ］(IN THE BOX)(プロフ) - おこわさん» 雰囲気を楽しんでいただけたようで何よりです！ありがとうございました〜！ (2020年6月1日 12時) (
レス) id: 4fd7cad6f6 (このIDを非表示/違反報告)
［ハコナカ］(IN THE BOX)(プロフ) - ひーとさん» 虜囚とこの話は繋がってるので要素入ってます！楽しんでいただけて幸いです(*≧∀≦*) (2020年6月1日 12時) (レス) id: 4fd7cad6f6 (このIDを非表示/違反報告)
おこわ(プロフ) - 仄暗い怖さと引き込まれるような文章、とても素敵でした！非常に面白かったです！ (2020年5月31日 21時) (レス) id: f852f9d302 (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 面白かったです虜囚の内容が若干入ってます？今回の作品も最高でした！ (2020年5月31日 20時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：［ハコナカ］(IN THE BOX)
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年5月31日 19時
