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睡眠恐怖症に加えて心霊現象ときた。どうやら夜は私を眠らせる気がないらしい。いよいよ殺意すら湧いてきた。
青い炎は私の目の前をゆっくりと横切ると、ドアの前でその動きを止めた。その場をホバリングするようにふよふよと漂っている。私は半ば苛だたしい気持ちで上体を起こした。
この時の私は恐怖よりもこの人魂のようなものを捕まえて外に放り出してやろうという気概が打ち勝っていた。安眠妨害め。安眠なぞしてはいないがこいつを許してはならない。何とも言えぬ克己心があった。
音を立てずにベッドから出ると、私は立ち上がりそっと爪先立ちで青い炎に近づいた。動く様子はない。両の手を伸ばして、まるで蚊を捕まえるかのように、手を叩こうとした瞬間だった。
コンコン。
今度は背後の窓が叩かれた。咄嗟に振り向く。全身の穴という穴から嫌な汗が吹き出して伝っていく。私の部屋には窓の外にベランダがあった。長身痩躯の男の影がそこには立っている。一拍遅れてここが二階なのを思い出す。
街灯の逆光とレースカーテンのせいで男の顔はよく見えない。心拍数が急激に跳ね上がっていく。
前門の虎後門の狼ならぬ前門の人魂後門の幽霊だ。明らかに夏に出くわしてはまずいものの二大巨頭に挟み撃ちにされている。
今すぐドアを開けて廊下に飛び出したかった。一階で寝ている両親のところに飛んでいって叩き起こしたい気分だった。足が竦む。これが金縛りだというのか。人魂相手ならまだしも人型の幽霊相手に非力な私では叶いっこない。呪われたら終わりだ。
コンコン。
二度目のノックが叩かれる。開けろということなのだろうか。夜中に開けろと言われて開ける馬鹿がいるものか。
(そうだ、電気、電気……をつけたらいなくなるかも)
へっぴり腰になりながらも暗い部屋の中で手探りでスイッチを探す。パチ、とドアの横についているスイッチを入れると遅れて部屋の蛍光灯が点く。突然眩しくなった部屋の中で、目を開けていられなくて瞼を擦った。
人魂は忽然と消えている。ベランダの幽霊も消えただろうとレースカーテンを開ける。そっと開けると、ベランダの外にはまだ男が立っていた。ギョッとして腰を抜かしそうになりながらも男の顔を見上げると、
「あれ……角名くん？」
そこには、『あけて』と口パクで部屋の中を指差して不服そうな顔をしているクラスメイトが立っていた。
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［ハコナカ］(IN THE BOX)(プロフ) - おこわさん» 雰囲気を楽しんでいただけたようで何よりです！ありがとうございました〜！ (2020年6月1日 12時) (
レス) id: 4fd7cad6f6 (このIDを非表示/違反報告)
［ハコナカ］(IN THE BOX)(プロフ) - ひーとさん» 虜囚とこの話は繋がってるので要素入ってます！楽しんでいただけて幸いです(*≧∀≦*) (2020年6月1日 12時) (レス) id: 4fd7cad6f6 (このIDを非表示/違反報告)
おこわ(プロフ) - 仄暗い怖さと引き込まれるような文章、とても素敵でした！非常に面白かったです！ (2020年5月31日 21時) (レス) id: f852f9d302 (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 面白かったです虜囚の内容が若干入ってます？今回の作品も最高でした！ (2020年5月31日 20時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：［ハコナカ］(IN THE BOX)
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年5月31日 19時
