残夏、君を待つ。【角名倫太郎】

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「倫太郎、今日は神社に行ってみようと思うの！」



彼女は天真爛漫で快活だったが、一度言い出したことはテコでも譲らない節があった。



「神社って、あの向こう岬の？」
「そう！崖の上に見えて前から気になってたの。ダメ？」


その日の目的や行動を提案するのは、大抵Aだった。

「ダメではないけど…………」



言うなればオレたちのいるところと目的の神社は半月状に切り取られた湾の端と端だ。歩いていこうとすれば30分以上かかる。



「…………本気で歩いていくの？」
「倫太郎と二人ならきっと行ける！それにおばあちゃんから神社の面白い噂を聞いたの」
「縁結びでしょ」
「どうして知ってるの！？」
「いやオレ生まれも育ちもこの辺なんだけど」


この辺りでも有名な神社の一つである。地元の人間なら恐らく誰でも知っている話だと思うが。




「う…………でも倫太郎と縁結びしたい！」
「あのさぁ、縁結びの意味分かってる？」
「え？」
「あそこの神社は新しい出会いを縁結びする神社なわけ。オレとAはもう知り合いだからもう言うなれば縁が結ばれてる状態。…………いや縁が結ばれてるって日本語おかしいか…………」
「えぇっ、そうだったの…………」




オレはあからさまにしょぼくれた彼女がこれで諦めることを祈った。
しかし事態はそう簡単に思い通りにいくわけもなく。



「なら私が新しい出会いを求めてお参りすることは別に構わないってことだよね？」
「えっ」




なぜか解釈を前向きな方向に変えてしまった彼女がまた笑顔に戻ったので、オレの頭は一瞬処理落ちを起こした。


「ど、どうしたの倫太郎…………？顔がヘンだよ…………」



心配そうに覗き込む彼女の顔を見ていたら、急にカチンときた。特に理由はないけど。



「…………ふーん、君はここにきてなお他の出会いが欲しいんだね」
「もちろん！せっかくここに来たのも何かの縁って日本語もあるじゃない？色んな人と出会いたいもの」

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