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「倫太郎見て!ヒマワリが咲いてるよ!」
盆の間、毎日のようにオレはあの公園のベンチに同じ時間に通った。彼女も同じ時間に同じように現れた。どこから来るのかは敢えて聞かないことにした。その方が良い気がした。
色んなことをした。
カモメとウミネコの違いについて二人で何時間も考えた。彼女は違いが分かるまで気になって眠れないというものだから、図書館まで調べに行ったりもした。
自販機でアイスを買って、往来の人々を眺めながらあの家族は幸せそうだとか、今通ったカップルは指輪をしていたね、だなんて他愛のない話を、日が暮れるまで延々と続けた。
Aは誰かと話すことが好きなのだと、そう言っていた。
「ここら辺には友達がいなかったから倫太郎とおしゃべりするのが楽しいの!」
「君が海から来たから?」
冗談めかしてそう言えば、真面目くさった顔で、
「そう。だから倫太郎が初めての友達」
なんて言うものだから、こちらが面食らってしまった。
友達、という響きになんだかモヤっとしてしまったのは何故なのか、それはよく分からなかったけど。
「ヒマワリ?」
「こっち!花壇にいっぱい咲いてる!」
今日はAが港まで行ってみたいと言うので、少し足を伸ばして歩いてきたところだった。
臨海公園の道沿いには、花壇に植えられたAの背丈ほどはありそうな大輪のヒマワリたちが顔を上げている。
「綺麗…………」
「…………大きいね」
太陽に向かって大きく咲いた黄色のそれを二人で眺めていると、Aがふと何かを思い出したようだった。
「ヒマワリ、私の誕生花なの」
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[ハコナカ](IN THE BOX)(プロフ) - ひなさん» ひなさんにそう言っていただけるなんて嬉しいです…季節描写には力を入れたつもりなので… 裏返しの夏が完全にバイブルでした、ありがとうございます! (2018年11月15日 7時) (レス) id: baa2eb420e (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 不確かで淡いひと夏の思い出と約束、縛られてプリムラを枯らす倫太郎くんが切ない……時の経過を花で表現する表現力にひたすら泣きました。短いながら濃密で、画面外の夏までひしひしと伝わるこの感じをエモという陳腐な言葉でしか表現できないのがもどかしいです。 (2018年11月14日 19時) (レス) id: b56c38f9b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:[ハコナカ](IN THE BOX) | 作者ホームページ:
作成日時:2018年11月14日 19時