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家に出てすぐ、オレは後悔を覚えた。


茹だるような暑さ。吹き出す汗。
大した所持金もないから、どこか遠出ができるわけでもない。

かと言って戻れば、酔っ払い達の餌食になることは明確な事実。



仕方なく当てもないまま歩き出して、ふと近所に公園があることを思い出した。

歩いて10分ほどの距離にある、海岸沿いの海浜公園だ。
あそこでなら多少の時間は潰せるだろう。



オレは足の向きを変えて、海辺へ続く坂道を下り始めた。






ガコン、と音がして、取り出し口にスポーツドリンクが落ちた。続けてお釣りの小銭が落ちて軽快な音を立てる。

公衆トイレの脇にあった自動販売機で飲み物を買って、砂浜へと向かう。



規模の大きくない海浜公園には、人はまばらだった。もう少し先にある大きな公園の方に人は流れていくから、ここに来るのは釣り客と近所の住民くらいだろう。
海鳥の鳴く声だけが残る。



ちょうど砂浜の終にある、屋根のついた軒下のベンチを見つけて、オレはそこに座った。

潮の匂い、生き物が死んだ匂い。
風が運ぶさざ波の羽音。




いつも見逃している物事がこうして1人でいると、驚くほどするすると、自然なことように入りこんでくる。



それを耳にしながら、オレは漫画でも持ってくるべきだったな、などと考えながらポケットからスマートフォンを取り出すと、SNSの通知を開いて、特に何もないことを確認するとまた電源を落とした。



その時だった。


強い風が吹いて、ふわり、と足元に赤いリボンのついた麦わら帽子が落ちてきたのは。

*→←残夏、立つ瀬なし。



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[ハコナカ](IN THE BOX)(プロフ) - ひなさん» ひなさんにそう言っていただけるなんて嬉しいです…季節描写には力を入れたつもりなので… 裏返しの夏が完全にバイブルでした、ありがとうございます! (2018年11月15日 7時) (レス) id: baa2eb420e (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 不確かで淡いひと夏の思い出と約束、縛られてプリムラを枯らす倫太郎くんが切ない……時の経過を花で表現する表現力にひたすら泣きました。短いながら濃密で、画面外の夏までひしひしと伝わるこの感じをエモという陳腐な言葉でしか表現できないのがもどかしいです。 (2018年11月14日 19時) (レス) id: b56c38f9b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:[ハコナカ](IN THE BOX) | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年11月14日 19時

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