想い、想われ、 (ページ2)

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『田中さん、台本です』

「はーい」

いつも通りわちゃわちゃした

6人の動録がはじまる。

ほんとに、撮影寸前まで楽しそうに喋ってて

ほんとに仲良いんだな〜

はじめて仕事に参加した時は

仲の良さに驚いたのを今でも覚えてる。

数分前まで真剣に打ち合わせをしていた樹くん

そんな真剣な姿にキュンとする。

そう

私は彼が好きだ。

アイドルとしてではなくて一人の男性として。

一緒に仕事をするようになって

彼を好きになるまで時間は必要なかった。

最初は怖いなって思ってた彼らは

みんな優しくて、面白い。

年齢も近いからすぐ仲良くなれた。

最初から特別視していたわけじゃない。

きっかけは一瞬だった。

道の角でぶつかるみたいな。

本屋さんで同じ本を手に取ったみたいな。

そんなよく聞く運命的な出会いなんかじゃなかった

打ち合わせの途中に香ったほのかな香り

『なんの香水つけてます？』

「なんもつけてない。ごめん。臭い?」

『いや、逆にいい匂いだったんで』

「まじ」

『いい匂い』

「え、ありがとう」

たったそれだけ。

きっと私は本能で彼に惚れた。

彼に惹かれたんだ。

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