おあいこ? ページ12
屋上でフェンスにもたれ掛かってとりあえず深呼吸をした。
暗い空が重く、さらに心は沈んだ。
髪にそっと触れる。
母と交わした言葉を思い出してる間に心は穏やかになった。
「私とした事が少しムキになりすぎたかな…」
母はお淑やかな人だった。
父が亡くなって女手一つで私を必死に育てたけれど、結局後を追って逝った。
最後に残した言葉は、強く優しくありなさい。
それだけだった。
私は別に母を憎んではいない。
確かに私よりも父を取り、逃げたことは許せるかと言われたら微妙だけれど、それでも全部仕方の無いことだと思うから…
「…」
夜空に輝く星が死人の魂だとよく聞くけれど、あの中に父も母もいるのだろうか。
いつまでも見守られるのは嫌だな。
「私、1人でも別に生きていけるもの。
お母さんが死んでからもずっと、1人だったもん。」
唐突に現れたカールハインツに誘われるがまま屋敷に来たけれど、これがよかったのか未だにわからない。
けど、退屈はしなくなった。
「悪い事ばっかりじゃないけど、今は最悪」
思い出してまたイラッとした。
シュウ「何が最悪って?」
急に扉が開いてシュウさんが声をかけてきた。
びっくりして少し肩が跳ねた。
「驚かさないでください…」
シュウ「勝手にアンタが驚いたんだろ」
「そ、それはそうですけど…」
ムッとしているとシュウさんが手を伸ばしてきた。
首を絞められた記憶が蘇り身構えたけれど、指先は顎にそっと触れた。
シュウ「なんだこれ…?」
「あ、えっと…さっき…色々あって」
シュウ「隠すな」
じっと見られてつい息を飲んだ。
顔が整ってる…いや、そこじゃないか。
「えっと…蹴られ、た…
あ、でも私も蹴っちゃったから多分おあいこ」
シュウ「アンタはどこ蹴ったわけ?」
すごい聞いてくる…
どしてだろう?
「え?お腹辺りを…」
シュウ「じゃあおあいこなんかじゃない。
どの女?めんどくさいけど、俺の餌に手出した奴放ってなんておけないからな。」
え!?いや、ちょっと待って。
まさか仕返しするつもりなの?
意外すぎて思わず瞬きを繰り返す。
シュウさんはそれを見てため息をついた。
「あ、えっと、大丈夫ですっ!私特に悲しくも困ってもないですし、怒りはしましたけど、シュウさんが手を下すまでもないので…」
シュウ「別にアンタの為じゃない。俺のモノに手を出したらどうなるか分からせるだけだ」
それってかえってもっと危ないものじゃ…
これから起きる事に目眩がした
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作者名:縷僂 | 作成日時:2019年11月18日 23時