＊ ページ6
Yellow.
ピピッと音を発した体温計の表示を確認する。
北斗の手を握る慎太郎が俺の顔色を伺うかのように、ゆっくり顔を上げたから、
これ以上彼が思い詰めてしまわぬよう、表情も変えず、声も出さなかったものの、…熱はすごい高かった。
39℃を優に超えてしまっているのに、どうして限界になるまで気づいてやれなかったのだろうか。
慎太郎は自分だけを責めているけれど、言ってしまえば俺らも同罪なわけで。
だけど、なんて声を掛けてやればいいのか分からなかった。
「…ああ、大丈夫だよ。ね？ 安心して」
良かれと思って言ったんだけれど、それがしらじらしかったのか、
慎太郎は不格好な笑顔で「うん」と呟く。すぐにぎゅっと口は閉ざされて、それはもう、泣かんばかりの顔だった。
「……ん、こち、…しんたろ、」
おでこに張り付いた髪の毛を軽く払い、冷えピタを貼ると、起こしてしまってらしく、熱のせいか水分を多く含んだ目が俺たちを捉える。
しばらく黒目で辺りを見渡したあと、ろれつの回っていない、子供みたいな声で彼は言った。
「じゅり、…は？」
「ジェシーと大我がみてる。
…樹のことを心配するのは構わないけど、自分のことも考えろよ」
あまり怒るのもいけないと思って、破顔する。
口をしきりに動かして、タイミングを見計らっている様子の慎太郎の方に回り、膝を折ってから、文字通り優しく背中を押した。
「ごめんっ。俺、酷いこと……。北斗、具合悪かったのに、それを知らないであんなこと言って…」
北斗は小さく首を振る。鼻をすすっている慎太郎を見て目を細め、時折苦しそうに息を吐きながらも、ゆったりした口調で彼は言葉を掛ける。
慎太郎の暗かった面持ちも、幾分かすっきりとしたように見えて、安堵の胸をなでおろした。
「あ、ジェシーからだ。ちょっと出るわ」
マナーモードにしていた携帯がバイブレーションを鳴らした。一言伝えてから立ち上がる。
壁にもたれながら右耳に携帯を当てた。
「慎太郎と北斗、どう？」
「うん。大丈夫だと思うよ。…まあ、熱は高いんだけどさ、仲直りしたというか。
そっちは平気？ ちゃんと看病できてる？」
扉の隙間から横目で中を覗き込みつつ、「できてるよー」とヘラヘラしているジェシーの声を聞く。
「ほくちゃんに言っといてよ。
演技が上手になるのもいいけど、具合悪いことを隠す手段として使うのは勘弁してくれって。haha」
りょーかい、と間延びした声で返事をした。
end.
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tiroru(プロフ) - ばーん。さん» ありがとうございます。了解です。ゆっくり待っていますのでばーんさんのペースでよろしくお願いします。 (2020年4月12日 12時) (
レス) id: b6a5c69903 (このIDを非表示/違反報告)
ばーん。(プロフ) - tiroruさん» 了解致しました！ お待たせしてしまうかと思います。少々お待ち下さいませ。 (2020年4月12日 1時) (レス) id: 6373f24c9d (このIDを非表示/違反報告)
tiroru(プロフ) - 2編目への移行おめでとうございます。いつも楽しく見ています。リクエストなんですけど、北斗くんが役作りでダイエットをしていて拒食みたいになってしまい、youtubeで食べる企画の時に苦労していまうというのがみたいです。可能であればお願いします。 (2020年4月12日 0時) (レス) id: b6a5c69903 (このIDを非表示/違反報告)
ばーん。(プロフ) - ry_ryさん» 了解致しました！ 全然大丈夫です。ありがとうございます。少々お待ち下さい〜 (2020年4月11日 10時) (レス) id: 6373f24c9d (このIDを非表示/違反報告)
ry_ry(プロフ) - コメント失礼します。いつも楽しく読ませて頂いてます！もし可能でしたら、京本くんが体調不良になってしまって、北斗くんが心配するみたいなのが見たいです（ ; ; ）！出来たらで大丈夫ですので、ご検討お願いします！ (2020年4月11日 1時) (レス) id: 226a24f45a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ばーん。 | 作成日時：2020年4月10日 1時
