■おぼろげなりんかく ミンハオ ページ2
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※暴力的表現があります。
「A」
私の上に馬乗りになり、両手で私の首を締めつけるのは、彼氏のミンハオ。
私を見下ろす瞳はどこか虚ろげで、ちゃんと私が見えているのだろうか。
(私はここにいるのに。どこにも逃げないのに)
それでもやっぱり男の人の力には勝てなくて。
どれだけ抵抗をしても、されるがままになってしまう。
「ね、世界に俺とAだけになれればいいのに」
そう吐き捨てたミンハオは口角を上げて笑っているはずなのに、目だけは笑ってないんだ。
(こわいこわいこわいこわいこわい、)
ああ、締め付けられた首が、息が、くるしい。
意識を飛ばさないように必死に自我を保つ。
薄れそうな意識のなか見つめるのは、ミンハオの光が消えてしまったような瞳。
早く、いつものミンハオに戻って、お願い。
「……み、っ」
苦しさから思わず涙がこぼれた。
ミンハオだってきっと、好きでこんなことをしてるわけじゃないから。
私が、ミンハオのそばにいないといけないの。
私が、ミンハオ助けないといけないの。
そうしないとミンハオはきっと、ダメになってしまう。
「み……ん、はおっ」
私は泣きながら力を振り絞りミンハオの名前を呼んだ。
すると突然我に返ったようにハッとした表情になり、両手が離れていった。
私は必死に呼吸を整えた。
「A、ごめん、なんで俺、こんな……」
「私は、大丈夫、だから」
「ごめん、A、本当にごめん、ゆるして……」
「ミンハオ、自分を責めないで」
「ごめん、ごめんな……」
ミンハオはそう謝りながら、優しく私を抱きしめた。
「A、愛してるよ」
あなたの世界で私はひとり、
(いつかこんな不毛なやり取りを終えることができるのだろうか)
もがき苦しむ。
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作者名：一色(ひいろ) | 作成日時：2017年1月31日 2時
