スキズちゃんの短編たち (ページ1)

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■雪が溶けたらヒョンジン 1 ページ1

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まだ少し肌寒く感じる春の1歩手前。
たくさんの生徒達が新しい人生の門出を迎えたヒョンジンの高校の卒業式の後。

もうすぐ穏やかで暖かな季節になるはずなのに、私の心はどこか違うみたいだ。

通い慣れた校舎の片隅にある多目的室。
あまり人が寄り付かないこの場所で、私たちはよく放課後の時間を過ごしていた。
ヒョンジンに告白されたのも、この教室だった。

もちろん私が高校を卒業してからは来ていなかったが、この場所はあの時のまま時間が止まっている気がした。
とうに私たちは変わってしまったというのに。

「ヒョンジナ、卒業おめでとう」
「ありがとう、Aヌナ」

私がお祝いの花を渡すと、ヒョンジンの顔に笑みがこぼれた。

ヒョンジンはそっと花束を机の上に置いた。

そして優しく絡められた指先から感じる体温は、あの日から変わることなく温かかった。
一歩、また一歩と大人に近付いたヒョンジンは、もう私の手の届く所にいないような気がしていた。

だからこそ、お別れをしないといけない。

「二人でここから見る景色も、これが最後だね」

私のその言葉を聞いたヒョンジンの肩が、少しだけ揺れた気がした。

「ねえ、なんで俺と会うのがこれで最後みたいに言うの？」

身長差のせいで私を見下ろすヒョンジンは、そう尋ねてきた。

普段笑顔でいることが多いヒョンジンだが、今は不安そうな表情で私を見つめている。
私の言動からきっともう、気付いているんだろう。

いつでもヒョンジンは私に寄り添い、支えてくれていた。
私もそうしてきたつもりだ。

もちろんヒョンジンのことは今でも大好きだ。
それはこれからも変わるわけなんてない。

でも、ヒョンジンの歩んで行く未来に、私がいたら邪魔になってしまう気がしたんだ。

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