愛は憎悪の始め。【及川徹】 (ページ10)

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その聞き慣れた声が聞こえた方向へ凄まじい速度で振り返る。

「な…んで…」

「いやあ、急に走ってっちゃうなんて、俺、凄く焦ったんだからね？でも見つかって良かったよ」

いつもの表情、笑顔、だけど＿＿＿

いつもより怖く、感じる。

「ほら、こんなとこに居たら風邪引いちゃうよ。帰ろう？A…」

そう言って手を差し伸べる及川先輩の手を振り払う。

今、この手を取っちゃいけない、そんな予感がしたから。

「ちょっとちょっと……どうしたの？」

信じられないとでも言いたげな顔をして此方を見つめる及川先輩。

僅かに、及川先輩が怒っているような気もする。

「あ、あの…ひ、一人で帰ります！」

そう言ってその場から離れようと思った＿＿＿

が。

しっかりと私の腕を掴んでいる及川先輩。

「は、離して…」

そう言うと腕を掴む力が強くなる。

これは、かなり怒っている。

意地でも離さないという意思も伝わってくる。

「Aはさ……俺の事、嫌い？」

私が答える間も無く、ハハ、と笑いながら話し続ける。

「そんな訳ないよね？だって、俺達両想いだもんね。でもさ…時々思うんだよね、俺はAの事が大好きだけど、Aは俺程好きじゃないんじゃないかって」

ギシ、と腕が軋む音がする。

い、痛い。

離して欲しい。

＿＿＿やっぱり、最近の及川先輩は変だ。