*…── 非 常 階 段 ──…* episode3

＊＊＊ ページ38

「しかもー…なあんか小瀧くんかっこよくなってるりー」

「……酔い過ぎやろ、」

「酔ってらい！全然だいろうぶー！」

「さっきから舌回ってへんがな」



よいしょ、と相変わらず軽い西条を背負い直して
暗い道をゆっくりと歩く。

自分の首に巻きついている、白い腕の細さにドキリとした。



「なあんでかっこおくなってるのよー！」

「ちょ、暴れんなっ」

「しかもぉ、いきなり帰ってくるり…」

「…西条？」

「ほんと……やだ、もお…私ばっかり……待ってたみたい…」



ポツリと呟いた其れは、
少し涙を含んでいるように聞こえた。

その証拠に、背中に冷たい雫が落ちた。



「いつも…私ばっかり………」

「あんなあ、俺はっ………、西条？」



すーすー、と規則正しい音がして、
思わず苦笑いした。

…ほんと、ずるい。
俺ばっかりやで。西条に振り回されて。

余裕ないんはコッチやって、いい加減気づいてほしい。




「綺麗になったな…」



暗闇に自分の声だけが響いた。

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