*…── 非 常 階 段 ──…* episode3

「calf love」 -N ページ18

「淳太さん、少し帰るのが遅れるみたい」

「…………おん.」



ケータイのメール画面を見て、リカは溜息をつく。

どうやら、淳太さんの仕事が長引いてるみたいや。



目の前には、所狭しと並べられた料理。
既にどれも冷めてしまっているが。

待ち合わせは19時やったはずなんに、時計の針は21時をとうに越えていた。




「御免ね、こんなに待たせて。」

「別に。」


時間通りに帰ってこうへんなんて、いつもの事なんやろう。

淳太さんは、忙しい人で
帰って来る日の方が珍しいんやと思う。




「望、来ないと思った。」

「ん。」

「……Aちゃん、純粋な子ね。」

「……せやから……、」





せやから、俺は

そんな西条と、居たら駄目なんや。


きっと俺は
彼女の綺麗な心を汚す。



「……………ごめんね。ごめんね、望。」

「リカ？」

「今までごめん……



私、淳太さんが好き。」




少し泣きそうになっているリカは、
メイクが崩れるのも構わずに目をこすった。



「政略結婚なんて、馬鹿馬鹿しいと思ってたけど、本当は。私を道具として使った両親に、反抗したかったの。」


けど、淳太さんに恋をしてしまった。

リカは、はにかみながらそう言うと、立ち上がって俺に頭を下げた。



「そんな自分も認めたくなくて…この前、望が言った通りよ。望に頼ることで、現実逃避したの。…本当に、御免なさい。」



____そうか、

俺や西条とっての現実逃避が非常階段であったように
リカも、現実逃避の場所が欲しかっただけ。

幾ら歳が上だからって、
人は弱い生き物に変わりない。




「許されるなんて、思ってない。けど……“弟”に、なってくれる…？」

「あんな？……俺の初恋は、」






リカに求められて、拒否やって出来た筈で。
でも、せえへんかった俺は


そうや

初めて会った時から


きっと。









「リカやねん。」

「2→←「2

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