バレンタインデー.2 ページ19
「ごめんね、帰るところだったのに…」
Aは、くるっと身体をこっちに向けて、俯いたまま、そう言った。
「ううん、部活なかったし…全然いいよ」
微妙な喜びを、発する言葉に混ぜないように、いつもと変わらない声で喋るように努める。
「もう、なんとなく分かってるかもだけど…」
さっきより、確実に赤い顔で、Aが微笑んだ。
心臓がどくんと跳ねる。
「これ、作ってきたから…バレンタインチョコです」
そうして、Aの両手に包まれた、俺が期待していたものが、目の前に差し出された。
白を基調とした、四角い箱で、ピンク色のリボンで飾り付けされていた。
バレンタインチョコ受け取るのって、こんな緊張したっけ……
「ありがとう。開けても、いい？」
それをゆっくり、優しく受け取って、一応確認を取った。Aが頷いたのを確認してから、リボンをそろっと解いて、蓋を取る。
「わあ…！」
チョコボールといえばいいのだろうか。白、茶、ピンクの丸い、デコレーションされたチョコレートが、9つ入っていた。
「苦手だったら、ごめんね」
「いや、全然！！むしろめちゃくちゃ嬉しい！すげーなA！」
ほんとに、そう思った。こんな時間の掛かりそうなものを、わざわざ作ってくれたのだから。
純粋に嬉しくて、めちゃめちゃ褒めまくってしまった。
「ありがとなA！俺、朝からずっとソワソワしてたんだよ、もしかしたらもらえないかもって思ってた。」
「や、そんな…！渡すタイミング分かんなくて…良かった。」
Aの笑顔に、心臓がまた跳ねた。
「食べてもいい？」
まだ見ただけだったのに気づき、Aに聞いた。案の定頷いてくれたから、チョコに、ホワイトチョコでデコレーションされたものを一つ手に取り口に入れた。
「うっっ……ま…！！」
なんだろうこれ、中になんか入ってる。生チョコか？固められたチョコを噛むと、中のそれが口の中で溶けた。
「うますぎる！！」
そう言うと、Aは照れた顔で、また「よかった」と言った。
「なんか、改めて、Aが彼女で良かったなって思った。俺のために作っくれたんだろ？ありがとう、マジで嬉しい」
今日は、なんだか素直になれた。バレンタインデーの効果ってすげえなって新ためて思う。
Aの真っ赤な顔を見て、伝えた。
「ホワイトデー、楽しみにしてて」
口の中には、まだ甘いチョコの味が広がっていた。
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ひよいち福(プロフ) - 桜 花芽根さん» わ、コメントありがとうございます!!そのギャップいいですよね~！ (2023年1月8日 10時) (
レス) id: a715ec8b04 (このIDを非表示/違反報告)
桜 花芽根 - 世一くんカッコいいし、可愛い…！ (2023年1月7日 23時) (レス) @page9 id: 6a7e843e24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひよいち福 | 作成日時：2022年12月24日 20時
