ほくほく短編集。3 (ページ8)

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夜の隙間に # 緑 × 黒ページ8

．※ 緑サイド ※ ノンリアル

「んんっ…はぁ、！」

路地裏から聞こえてくる、淫らな声。現在時刻は午後11時。
気になって声の方を見に行くと、綺麗な男の人が壁に押さえつけられてキスをされていた。

傍から見れば、嫌がっているように見えた。

少なくとも俺は。

．

『何してるんですか？？』

そう声をかけると、驚いた顔をして去って行った、押さえつけていた方の男。

『大丈夫ですか？』

綺麗な方に声をかけると、キッと睨まれた。

「もー……何してくれてんの」

「せっかくいいの見つけたのに、」

『…へ？』

何を言っているのかが分からない。

「俺、こうやって身体売って仕事してんの」

『…………そうなの？！』

．

いやぁ、助けるつもりが邪魔をしてしまったみたい。

でも、こんな所でやる方がおかしくない？間違えられて当然じゃない？？
そう言いたかったけど、無理だった。

顔を上げて俺を見つめる彼が、あまりにも綺麗だったから。

髪の毛はくるくるしてて、どこかワンコらしさがある感じ。

俺が思ってたのと、違う言葉が口から飛び出した。

．

『君さ、綺麗なんだからこんなのやめた方がいいよ』

「……え？」

「……俺は綺麗なんかじゃないよ、

色んなヤツに抱かれた野郎が、綺麗だと思う？」

『すっごい綺麗だよ。』

彼の顔が、ポっと赤に染った。
そしてふにゃんと笑う。

なんだ、笑顔も可愛いじゃん。

．

『……てか、ほんとにごめん、』

「何が？」

『邪魔しちゃったじゃん、その……』

「ああ、…大丈夫」

『お金とか、もらう予定だったんじゃないの、？』

「うん、まぁそうだけど……」

『じゃあさ、俺が相手してあげよっか？』

名前も知らない奴に抱かれるなんて、俺だったら嫌かもしれない。

でも、そういう仕事してんでしょ？

彼に興味を持った俺は、ほんの少しの好奇心でこう喋ってしまった。

「……いいの？」

答えが返ってきて、少し焦る。

『うん』

「俺、汚いよ？」

『ううん。ほら、行こう？』

彼の手を握って、俺の家まで向かった。

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