赤色の幸福。 ページ9
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俺がAを幸福への標とするのに、そう時間はかからなかった。
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「Aー!はよ来ないと置いて行くでー!」
「重岡くんまって!!!僕まだ靴履いてない!」
「A!なんで俺を置いていくん!?しげの方が大切なん!?」
バタバタと足音を鳴らしながら勢いよく抱きついてきた小瀧に対して、そんなことないよーと答えながらもいそいそと靴を履くAをみて、思わず「しっかり飼い慣らされてるやん!」と笑ってしまった。
思春期に入って周りには若干スカした態度取ってるくせに、A相手だとこれだもんな。
鼻につくなんて言われて先輩からあまり好かれていなかった"""あの"""小瀧からは想像できないほど五歳下の小学生に対して顔を赤らめて引っ付いている。事案やろ。
____Aが入ってきてから、俺を取り巻く環境が、ほんの少し、少しだけ良い意味で変化した。
無償の優しさで周りを絆し、無自覚に良い方向へと導いていくAは、正しく幸福への標みたいだ。
暗闇の中で変わる事なく同じ場所で爛々と輝く北極星。
悩んだ時、迷った時はAに着いていけば間違いないと、幼いながらに思わせてくれる、不思議な奴。
…
「重岡くんおまたせしました!…?重岡くん?」
「…あっ、すまんすまん!ぼーっとしてたわ」
「もー!何が「ハヨシナイトオイテクデー!」なん?ぼーっとするなら俺とA、2人だけで帰るで?なー!A♡」
「そんな意地悪言っちゃだめだよ!あと望くん、暑いからぎゅーじゃなくて手繋ご?」
「え、ええの?手???繋いで??繋ぐ繋ぐ!…ふわぁ〜♡しあわせ…♡」
手を繋いだ瞬間に感嘆の息を漏らす小瀧に、普段からベタベタくっついてるくせになんで手繋ぐだけで緊張すんねんとツッコもうとした瞬間「重岡くんも手.繋ご!」とキラキラの笑顔を向けて来たAを見て、喉まで出かかった言葉をグッと堪える。
はいはい、なんて仕方がないという風に装ってふわふわの手を優しく握り返しても、この天使の前では緊張で震える手と急激に上がる体温によってどうしても歳上としての威厳は保てない。所詮、俺もAの掌で転がされている人間の一人ってわけや。
「…しげも男やな」
「いや、どういうことやねん」
手を繋ぎながら顔を緩めた俺を見て、フッと鼻で笑う小瀧を、Aにバレないようにそっとひと睨みした。
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帳(プロフ) - asa258さん» こんにちは。こちらこそありがとうございます…!自分の書きたい設定を一つの作品に詰め込んでしまい、別々の作品に分けて作ればと少し後悔しておりましたが、その様なお言葉を頂けて嬉しいです。遅筆ですが今後もこの作品にお付き合いくださいませ。 (4月18日 20時) (レス) id: 5bb6fcd9aa (このIDを非表示/違反報告)
asa258(プロフ) - 更新ありがとうございます。西の7人さんも娘。の384さんも大好きなので、このお話に出会えて嬉しいです。男主さんもかわいいだけじゃない強かさがあって読んでいてとてもわくわくします。これからも読ませていただけると幸いです。 (4月17日 19時) (レス) id: 576d67210c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:帳 | 作成日時:2023年8月19日 0時