半分のおにぎりと分け合った感情 ページ15
しばらくして、バーベキュー会場の方へ戻って来た。お腹もまだ空いているし、気持ちも落ち着いた。大丈夫、私は大丈夫。
近くにあった塩おにぎりを手に取り、ゆっくり噛んでは嚥下していく。お腹が空いた。もっと、もっと食べたい。満たされたい。
「こっちも美味いぞ」
「うんむぅ」
いつの間にか隣にいた飛雄がおにぎりを口に突っ込んできた。
「唐揚げ？」
「俺特製だ。美味いだろう」
「美味しい…飛雄っておにぎり握れたっけ？」
「いつの話してんだよ。とっくに握れるはボゲェ」
私の飛雄は5年生らへんで止まっているが、現実では背も伸びておにぎりも握れるようになって止まっていない。今、ちゃんと再確認した気がする。
「……赤葦さん、よかったのか？」
「？、よかった？」
「告白断ってただろ」
「いいから断ったんじゃん」
「嫁の貰い手はいいのか？」
飛雄の中の私もきっと小さい頃のまま止まっているのだろう。少し、安心した。変わっていない。飛雄はずっと。私が歪な人間になっている間も、綺麗なままで止まっている。
「いーの。もう探してないから」
「！？！？！？」
「驚きすぎでしょ」
目を見開き動きが止まった飛雄。そこまで必死に探してはなかったと思う。私、どんだけ嫁の貰い手探してたんだよ。
「俺がもらってやろうか？」
「は？何で？」
「いやだって、Aちゃんは可愛いだろ。諦めるには早い」
「どーいう理論？？？」
未だに思考回路が読み取れないことがある。今だが。
「大丈夫だAちゃん。幸せにする」
「話聞いてないな？ちゃんと聞け、飛雄」
とりあえず結婚の必要性がないことを教えておく。おい、よそ見すんな。私が握っているおにぎりを見つめるな。私の米だ。やらないぞ。
「…………一口だけだかんね」
「うまい」
「一口がでかい！」
昔に戻った気分になった。飛雄の一口はデカイ。あの頃のまま変わって、いない。
「くふふふふ、飛雄のそういうとこ好きだよ」
「おう。俺もAちゃんの事好きだぞ」
初恋が飛雄でよかった。好きを伝えると真っ直ぐに返ってくることも、不器用で優しいことも、変わらないところも。全部好き。
恋愛感がねじれておかしくなって愛情が歪な形のままでも、無自覚にも恋をしていたあの頃とは向ける感情が少し違っても、好きという感情は不滅なのだろう。
半分になったおにぎりを食べる。不思議と満たされた気分になった。ずっと苦しい。でも、今は少しだけ緩和した気がした。
アルコールにはご注意を→←そんな瞳で見つめないでと裏返った心が叫んだ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きなこもち - コメントありがとうございます！嬉しいです。 (2020年11月30日 21時) (
レス) id: 95f5385eac (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - とても面白いです！一気に読んでしまいました…！陰ながら応援しています(*ﾟ∀ﾟ*) (2020年11月30日 19時) (レス) id: 47378f0ea6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きなこもち | 作成日時：2020年8月23日 14時
