15.彼。 ページ15
電車が見えなくなって、家に帰ろうと思ったその時
『A』
聞き覚えがある声。
｢...侑李？｣
侑李｢.....ねぇ｣
大好きだった彼の声。
毎日聞いていた彼の声。
でも、"あの日"からずっと避けていた彼の声。
つい最近別れを告げ、もう聞くことはないと思っていた彼の声。
なぜか怖くて振り向けなかった。
彼に後ろめたい気持ちがあった。
侑李｢A...僕の方見てよ｣
｢.....｣
侑李｢A...お願いだから｣
ゆっくりと振り向くと、いつもと変わらない侑李がいた。
大好きだった彼。
何をしても憎めなかった彼。
そこには、私が大好きだった彼がいた。
｢...何？｣
侑李｢...大ちゃんといつ仲良くなったの｣
｢...え？｣
侑李｢だから、あの日あんなことをした大ちゃんといつ仲良くなったの？｣
彼は怒っていた。
聞き慣れた可愛らしい高い声じゃなくて、低くて男らしい声。
｢っ...｣
侑李｢ここじゃあれだからさ、移動しよ｣
｢.....｣
動けなかった。
何をされるか分からない。
何を言われるか分からなかったから。
いつまでも動かない私を彼は
侑李｢はぁ...行くよ｣
ぐいっ
と、強く引っ張ってドンドン歩いて行く。
｢っ...痛いっ｣
侑李｢うるさい｣
そう言って連れてこられた所は、よくデートをした公園だった。
侑李｢僕の質問に答えて...｣
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作者名：おむきんぐ。
| 作成日時：2018年2月18日 8時
