12.ぎゅって ページ12
裕翔｢A、ばいばーい！｣
｢うん、またね！｣
ばたんっ
有岡君の笑顔に胸がぎゅって締め付けられる。
侑李と別れたばかりなのに。
有岡君にも原因があるのに...
｢ふぅ...だめだめ｣
そう。
これは気のせい。
この気持ちは気のせい。
｢何やってるんだろ...早く家に入ろう｣
でも、やっぱりどこか寂しくて...
｢大...ちゃん｣
ぐいっ
｢｢何？｣｣
｢えっ？｣
｢｢だから...何？｣｣
誰かに手首を捕まれた。
振り返ると、そこには
｢あ...あり...有岡君｣
"有岡大貴"が立っていた
大貴｢ふふっ。どーして有岡君に戻っちゃうの？｣
大貴｢大ちゃんって呼んでよ｣
大貴｢それとも大貴って呼んでくれる？｣
｢っ...いや、大ちゃんで｣
大貴｢ふふっ。分かった｣
そう言って、くしゃって笑う彼。
その笑顔はとっても可愛くて、幼くて
私の心を締め付ける。
大貴｢で、何？｣
｢へっ？｣
大貴｢さっき、大ちゃんって呼んでたじゃん｣
｢え...いや、何も...｣
大貴｢ほんとにー？｣
そう言って彼は私の顔を覗き込んできた。
人よりも多く水分を含んだ彼の瞳。
その瞳はさらに私の胸を締め付ける。
｢ほっ...ほんとに！｣
大貴｢ふふっ。またね、Aちゃん｣
そう言って、彼は帰って行く。
私は彼が見えなくなってもずっとそこに立っていた。
用事があったわけじゃなかった。
あのまま裕翔の家にいたら彼への気持ちに歯止めがきかなくなると思った。
大ちゃんへの"好き"って気持ち。
だって、大ちゃんは"あの日"の人。
好きになっちゃイケナイ。
好きになっちゃイケナイ...？
どうして？
あんなひどいことをした人だから？
ううん。違う。
まだ、侑李のことが好きだから。
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作者名：おむきんぐ。
| 作成日時：2018年2月18日 8時
