天衣無縫・雪の夜

第39話 ページ47

福沢の気迫が迸った。



それを殆ど物理的な放射となって



室内を駆け抜けた。



硝子窓が震え、照明器具が音を立て



遠くに歩く劇場関係者が小さく



悲鳴をあげた。



それは武術の達人が放つ



"遠当て"に似た現象だった。


無意識に放たれた裂帛の一撃を、



乱歩は至近距離でまともに浴びた。



見えない大槌に



殴り飛ばされたような衝撃に



躰を強く撲たれた乱歩は、



数歩後ずさって尻餅をついた



尻餅をついたまま、



乱歩は何が起こったか



判らないという顔で



ぱちくりと瞬きをした。



超一級の遠当てをまともに食らって、



一瞬だけ意識を刈り飛ばされたのだ。



かくいう私は、"判っていた"ので



特に変わらず立っていた。



福沢ははっと我に返った。



「済まん......怪我はないか」



乱歩の近づいて助け起こす



「うあ......?」



乱歩はまだ瞬きを繰り返している。



福沢は動揺しているようだった



素人に遠当てを叩きつけるほどに



あったばかりの少年に見破られるとは



思っていなかったのだろう。



そんなにもあっさりと

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