黒猫兄貴は行方不明【黒尾鉄朗】

story17 ページ18

研磨side




一人の通学路ももう慣れた




前まではクロと歩いていた通学路は少しだけ広く感じる




クロがいなくなって心を痛めているのはAだけじゃない




夜久君達がどれだけ心配して、芝山達がどれだけ泣いたかなんて覚えてない




夜久君は目の前の課題に集中しろって気にしてない風を装っていたけど、皆知ってる




夜久君が一番心配してて休憩の合間はずっとクロに連絡してること




でもやっぱり一番心配して探してるのはAだった




一人で抱えこんで夜にクロを探しに喧嘩してるなんてクロも知らないだろう




止めなきゃと思ったけどこうなったらAは絶対止めない




まずはクロを見つけなきゃ




「…ゲームできないじゃん。」




真っ暗な空は大粒の涙を溢して俺の傘を打ち付けていた





＊＊＊

赤葦side




朝練も終わって二年の教室に上がる途中、見慣れた背中が目に入った




でもそいつは元気とは言えない足取りで歩いていた




「A。」



「…？京治。」




振り返ったAの顔はやつれていて頬には大きなガーゼを貼っている




「なにその頬。」



「喧嘩。」





まただ



この答えを何度聞いただろう




「ねぇもう無理はしないって約束して。体がもたない。」



「…わかった。約束する。

私は大丈夫だから。」




それも何度も聞いた




もう好きな人の傷つく姿は見たくない

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