30 ページ30
Aがこの世界に来て、早くも1ヶ月が経とうとしていた。頻度は減ったが、相変わらずAは襲われている。その度に誰が助けてくれている。だが今日は、いつもと少し様子が違った。
Aはピンチに陥っていた。そう、生理だ。世の女性が忌み嫌う生理。朝起きた瞬間、ベッドシーツが赤黒い経血に染まっている絶望。そして下腹部の鈍痛。
ここには男しかいない。彼らにはきっと女性の生理の知識なんか無い。パジャマまでもが汚れている状況。もうすぐトントンが来る。覚悟を決めたAは、部屋にある電話である人物にかけた。
『もしもし、鬱さん？』
『おはよう、Aちゃん。どうしたん？あ、もしかして俺の声聞きたくなってもうた？そうならそうと言ってや』
『あっ、違います』
『うん、分かってるよ？そんな真っ直ぐ否定せんといてや。繊細な鬱君のハートは粉々やで』
『元気そうでなによりです。鬱さん、今すぐ部屋に来てくれませんか？お医者さんですよね？』
『分かった。すぐ行く。ごめんね、話伸ばして』
彼女が電話をかけてくるなんて余程の重症なのだろう、と考えた鬱先生はすぐに電話を切って彼女の部屋へ向かった。朝からクスッと笑ったAはとにかく彼の到着を待つ。30秒もせずに着いた鬱先生は、鍵のかかっている部屋の扉を突き破ってきた。
「大丈夫……いやあああ！Aちゃん！血の量が！出血多量で死ぬで？」
ベッド上の大惨事を見た鬱先生は喚き立てる。
「違います違います。……その、生理って聞いた事あります？」
「勿論。俺の仲ええ野良とかからもよく聞くし。あ、でも最近はAちゃん一筋やで？」
「それは別にいいんですけど……都合よくナプキンあったりとかします？」
「流石にないなぁ。でも、痛み止めならあるで？痛いよね。おいで」
鬱先生はAの腹を優しく撫でる。それで良くなることはなかったが、不思議と安心できた。
「シーツと服は洗っとく」
「いや、私一人でできますから！」
「ええから。今、部下に保護センターまでナプキン買いに行かせるね」
「大丈夫ですよ」
「Aちゃんは今日は俺と2人きりね。トントンとかにも部屋に入らんよう言うとくから」
「……ありがとうございます」
鬱先生は、お湯をペットボトルに入れると、彼女に渡す。
「それで温めるとええよ。それとも俺が優しく撫でたろか？」
「大丈夫です。ッ、」
「痛い？」
「ええ、……鬱さん。手、貸してもらってもいいですか？」
「勿論」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1459人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2022年11月23日 16時
