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「おかえり」
「ただいま、です。すみません、お待たせして」
照れたように笑ったA座って料理の上に手を翳す。
「よかった、まだ温かい。じゃあ、食べましょうか」
Aの言葉で皆は一斉に料理に飛びつく。
「美味い!」
「A!何これバリ美味いんやけど!」
「唐揚げです。コネシマさんはそれがお気に入りなんですね」
「これは?」
「煮物ですよ」
「これ、美味いな!」
初めて食べる日本食に皆はキャッキャと喜んでいる。山盛り作ったそれは一瞬でなくなり、Aも嬉しそうだ。
「A。酒あるで」
「あっ!テメェ俺の部屋のやつやんけそれ!」
机の上に置かれたワインを見てグルッペンが目を吊り上げる。
「ワインですか」
「嫌い?」
「いえ、ワインなら好きです。でも、グルッペンさんのだとしたら大丈夫です」
「ええよ」
「え?」
「Aが飲むんやったら、開けてもええ」
「やったー!ありがとうございます」
気付けばもう深夜になっていた。酔って寝ている者も居れば、ダル絡みを続ける者も居る。Aは宴会をソっと抜け出して、庭に出ていた。空には半月。雪を葉に乗せる松の木は風流である。我々国の超技術で一年中咲いている桜の花。月明かりを受けて鈍く光っていて心落ち着く。
「あんま変わらんな」
「そうですね、比較的酔わない方だと思います」
Aを追ってやって来た男、コネシマを見てもAは特に驚かなかった。
「日本……か。俺も行ってみたいわ」
「ええ、今度は私が皆さんを案内したいです。日本だけじゃなくて、私の住んでいる世界を」
「あの小さい山はなんなん?」
「富士山です。日本で1番大きな山です。古くから人々に愛された山」
「ええなぁ」
「っくしゅ」
「寒なってるやん。着てろ」
Aに上着を放り投げたコネシマは、長椅子に腰を下ろした。
「コネシマさんの匂いがします」
「あー、ごめん。ヤニ臭い?」
「いや、そういうつもりじゃないですよ。私は案外好きですよ。貴方の香り」
コネシマは天を仰いだ。学習しない馬鹿な女が心底愛おしい。
「コネシマさん。私、元の世界に帰ると言っておきながら、少し帰りたくない気もするんです」
「俺らも、帰って欲しくない。それが本音や」
「元の世界に帰ったら、二度と会えなくなっちゃう。記憶が消されちゃうかもしれない。もう、皆さんに会えなくなるのは嫌です」
「じゃあ、ずっとこっちの世界に居ればええ」
「…でも、家族が心配です」
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かす(プロフ) - かこつです。楽しませていただきました。ありがとうございます (7月17日 19時) (レス) @page48 id: b1482de086 (このIDを非表示/違反報告)
らあゆ(プロフ) - ありがとう……ありがとう……ほんまにありがとう…一気読み最高でした( ;∀;)夢主可愛すぎるだろ…ありがとう(*´;ェ;`*) (2023年3月21日 8時) (レス) @page47 id: 61afbf51de (このIDを非表示/違反報告)
♪si?do☆(プロフ) - とっても面白かったです!また面白い作品書いてください! (2023年1月6日 16時) (レス) id: 89c26ef77d (このIDを非表示/違反報告)
ヒル(プロフ) - 新しい番外編...?好き。夢主の平和ボケっぽいのがずっと抜けない感じ好き。もう、語彙力喪失。ありがとうございますほんとに番外編感謝します...! (2022年12月21日 23時) (レス) @page43 id: e3196d1b3b (このIDを非表示/違反報告)
小雪 - 完結おめでとうございます!番外編が好きすぎる…。いつも更新されるたびにわくわくして読ませていただいておりました。本当に素敵な作品をありがとうございました! (2022年12月16日 0時) (レス) @page41 id: 472937dc0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年11月23日 16時