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「A」
襖越しにに聞こえてきたのは、ロボロの声だった。彼は、Aが我々組で保護されるようになってからも、ずっと以前と変わらぬ呼び方で呼んでくれる。だから、調子が狂わない。
「なんですか？天野先輩」
偽名と知っていても、Aも呼び方を変えることは無い。彼らは、叔父貴に育てられるようになってから、本当の名前を捨てて、今の名前を貰った。
「良かったな。ええ旦那さん貰えて」
「天野先輩も、いい女性が見つかりますよ」
「っはは、珍しいやん。お前がそんなん言うなんて」
ロボロが襖に寄りかかったのか、ギシッと襖が音を立てた。ギュッと羽織を抱き締めたAは、布団から出て、襖の前にちょこんと座る。
「人肌恋しくなりましたか？奥方」
すぐ近くで聞こえるのは、チーノの声。トントンにAを託されてからしっかりと部屋の前で守っている。Aからは見えないが、Aの部屋の前を通る組員達は皆、顔を強ばらせて早歩きで部屋の前を去っていく。
ロボロもチーノも、武器を片手に部屋の前にあぐらをかき、通る者を睨みつけている。それから数時間、他愛もない話をしながら、トントンの帰りを待った。空はすっかり真っ暗に。
もう冷めてしまった夕食に手をつける。口いっぱいに広がる美味しさに、つい顔が綻ぶ。
「遅いなぁ」
仕事帰りの夫を待つ妻の気持ちはこんな感じなのだろうか、という思考に至ってしまうAは、十分トントンに毒されていることが分かる。
「……!!おかえり、待ってるで」
そんな声が聞こえた。ありがとう、という愛おしい彼の声が聞こえた。スっと襖が開けられる。
「ただいま」
「……おかえりなさい。トントンさん」
決して、綺麗な姿では無かった。返り血に身を染めている彼は、Aを見るなり頬を桃色にして、嬉しそうに笑う。1日以上会っていない訳じゃない。たった数時間離れ離れになっていただけなのに、会えたことにすごく喜びを感じた。
「A……それ」
Aの手にある羽織りを見て、トントンは目をま丸くする。カーッと顔を赤くしたAは、羽織りで顔を隠した。そして、聞こえるかどうか分からない程小さな声で、寂しかったんですもん。と漏らす。
「……っ、可愛すぎるやろ」
しかし、血濡れの体ではAを抱きしめられない。
「なぁ、A。風呂入った？」
「まだです」
「良かった。じゃあ、一緒に入ろか」
普段なら断っていた。でも、今日だけは、今だけは頷いてしまった。
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ゆず塩(プロフ) - 何回も読み直して部屋が水没するくらい泣きました…最高です！！ (3月29日 1時) (
レス) @page50 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - もうこの作品も最高でした!!!!最後のrbrさんとの話がまたよかったです!!大好きです!!←突然の告白 (2022年12月11日 14時) (レス) @page50 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - ボロッボロに泣きました。とても素敵なお話でした。今までたくさんのお話を読んできましたが、こんなに感動して心を動かされてドキドキしたものはこれが初めてでした。何度も読み返させてもらいます！素敵なお話をありがとうございました！！ (2022年9月5日 18時) (レス) @page50 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぺに(プロフ) - ｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡←感動しました。ひよこさん大好き。 (2022年6月17日 23時) (レス) @page50 id: bcadc0cb73 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ（初心者） - なんちゅう殺傷能力の高いお話を書くんや・・・最高ですありがとうございました。自分的に最後のrbrさんとの会話がウヘヘヘヘ←ｷｯﾓ (2022年5月2日 23時) (レス) @page50 id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年10月10日 17時
