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「誰に電話かけようってんだ？」
携帯を奪われて、床に叩きつけられる。ひび割れた画面は、光さえも映さず破片を零す。人質の行動に腹が立ったのだろう。Aの髪を鷲掴みにし、窓ガラスへ向かって投げる。
「うっ」
背中を強打し、息が詰まる。余程短気なのか、それともストレスが溜まっているのか、Aを投げた程度で怒りは収まらなかった。縛った手を引きずって、ソファへ連れて行く。月明かりに照らされた男は、覆面を被っていても分かるほど、欲望に全てを任せた顔をしていた。
「妻が他の男に犯 されたって知ったら、冷酷な組長様でもその面剥ぎ落として、泣きじゃくるだろうなぁ。我々組も零落するだろう」
そんなものは今考えたAに手を出す理由に過ぎない。仕事の服のままだったため、一つ一つボタンを外される。グッと握った拳は、相手に届くことなく縄のせいで頭上に留まる。
胸の下でボタンは止まり、そこまで服をひん剥かれる。
「ふむ、大きくは無いが、形は良い」
大きくは無い。そう言われて、少しAの口が曲がる。知らない男に、下着越しだが胸を見られるのは、恥ずかしさよりも悔しさが勝った。もちろん、屈辱的なことに変わりは無い。
「30分だな」
男が時計を見て呟く。向こうも時間が無いのだろう。もう、Aは感情を捨てるしかないと悟った顔で歯を食いしばったその時だった。
「30分？笑わせんなや。今すぐお前は死ぬんだよ」
聞こぼえのある、安心する声だった。しかし、聞いた事のないような酷く冷めた声。
「トントンさん…!!」
「ごめん、親父が邪魔で遅れた。……さてと、おいクソ野郎。どこの組のもんや？」
「クッソ…!!」
トントンはゴキブリでも見るかのような目で、覆面男の覆面を取った。男の顔を見ると、すぐにピンときたようで、鷹組の残党か、とため息と一緒に吐く。
「なぁ、お前。誰の妻に手ぇ出してんねん」
Aでさえも震え上がるような、恐ろしい声色。トントンは、刃先を男の顔に向ける。ツツ、と頬をなぞると、赤い血が垂れてくる。恐怖で動くことができないらしい。Aもよく分かる。と、頷く。
「ホンマは、楽に死なせるつもり無いねんけど、Aが居るからな。感謝せえよ」
なるべくAの記憶に残りにくい殺し方で。トントンなりの、精一杯の気遣いだった。力一杯に心臓を貫かれた男は、数秒苦しんだ後に力無くして倒れていった。
「……久しぶり」
にこやかに笑うトントンは、前と変わっていない。
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ゆず塩(プロフ) - 何回も読み直して部屋が水没するくらい泣きました…最高です！！ (3月29日 1時) (
レス) @page50 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - もうこの作品も最高でした!!!!最後のrbrさんとの話がまたよかったです!!大好きです!!←突然の告白 (2022年12月11日 14時) (レス) @page50 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - ボロッボロに泣きました。とても素敵なお話でした。今までたくさんのお話を読んできましたが、こんなに感動して心を動かされてドキドキしたものはこれが初めてでした。何度も読み返させてもらいます！素敵なお話をありがとうございました！！ (2022年9月5日 18時) (レス) @page50 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぺに(プロフ) - ｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡←感動しました。ひよこさん大好き。 (2022年6月17日 23時) (レス) @page50 id: bcadc0cb73 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ（初心者） - なんちゅう殺傷能力の高いお話を書くんや・・・最高ですありがとうございました。自分的に最後のrbrさんとの会話がウヘヘヘヘ←ｷｯﾓ (2022年5月2日 23時) (レス) @page50 id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年10月10日 17時
