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それから、時は流れてそろそろ季節の変わり目に近づいた頃、Aは奇妙な気配を感じていた。仕事に疲れて電車に揺られている時のことで、最初は気のせいだと無視していたが、あまりに気持ち悪すぎるそれに、Aは無視できなくなっていた。
どこからか向けられている視線。チラチラと周りを見回してもそれらしい人物は居らず、自分の勘違いだと思うしかない。
駅を出てからも、ずっとつけられている。自分が止まると、向こうの足音も止まる。怖くなって、小走りで家を目指すが、自分と同じように向こうの音も早くなる。怖くて振り返れない。誰かに電話をして助けを求めたいが、電話している最中に追いつかれたら。こんな暗くて人通りの少ない道で刺されても、誰にも気づいて貰えずに出血多量で死んでいくだけだ。
Aの頭には、無意識にトントンの顔が浮かんでいた。もう縁を切ったはずなのに、なんで浮かんでくるんだ。
家に近づくにつれ、酔っぱらいが増えていく。こんなにも酔った人間に頼もしさを感じたのは初めてだ。ようやく、マンションに着いた。家に帰ればこっちのものだと、エレベーターに乗り込んで、自室へ戻る。
鍵を2つとも閉めて、チェーンをかける。念の為に、扉の前に椅子を置いて、バリケードを作る。薄暗い部屋の電気をつけて、しゃがみこんで携帯を手に取る。
その時だった。部屋の扉がガチャガチャと音を立てた。しかし、鍵がかかっているため、入れない。諦めたようで、音はしなくなった。驚きのあまり携帯を投げ捨てていたAは、もう一度拾う。
「…はぁ、はぁ」
呼吸が乱れて、手が震えているのが分かる。110それを押すだけでいいのに、無駄に手こずる。ようやくかけられる。安堵の息をついた瞬間、窓ガラスが割れた。ポロッとAの手から携帯が落ちる。
「こんばんは、Aちゃん。怯える顔も可愛いね。おじさんのために、ちょっと一緒に来てくれない？」
覆面の男は、手に持っていたバールを部屋に放り投げると、乱暴にAの両手を縛り上げた。
「我々組組長の世代交代。つまりは妻を得たということ…なぁ、Aちゃん。まさか君のような一般人が我々組組長の弱点とはね」
クスクスと笑いながら、男は部屋を荒らす。金目の物を探しているのか、それともトントンの弱味を探しているのか。その間に、Aは携帯を手に取った。入れたつもりは無いが、いつの間にか追加されていた電話番号。
トントンが嬉々として入れていたのを思い出す。
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ゆず塩(プロフ) - 何回も読み直して部屋が水没するくらい泣きました…最高です！！ (3月29日 1時) (
レス) @page50 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - もうこの作品も最高でした!!!!最後のrbrさんとの話がまたよかったです!!大好きです!!←突然の告白 (2022年12月11日 14時) (レス) @page50 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - ボロッボロに泣きました。とても素敵なお話でした。今までたくさんのお話を読んできましたが、こんなに感動して心を動かされてドキドキしたものはこれが初めてでした。何度も読み返させてもらいます！素敵なお話をありがとうございました！！ (2022年9月5日 18時) (レス) @page50 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぺに(プロフ) - ｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡←感動しました。ひよこさん大好き。 (2022年6月17日 23時) (レス) @page50 id: bcadc0cb73 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ（初心者） - なんちゅう殺傷能力の高いお話を書くんや・・・最高ですありがとうございました。自分的に最後のrbrさんとの会話がウヘヘヘヘ←ｷｯﾓ (2022年5月2日 23時) (レス) @page50 id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年10月10日 17時
