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「……軽くないですかね」
「そう?」
キスとはこんなに簡単にするものだっただろうか。
「そういうもんちゃうんか?……まぁ、ええわ。明日早いんやったら、はよ寝えや」
ポンポンとAの頭を優しく叩いて、トントンは日本刀を手に取った。部屋で武器を持たれると、Aも少し身構えてしまう。そろそろ3時になる。Aはふぅ、とため息をついて廊下を進んだ。
「A、おやすみ〜」
「はい、おやすみなさい」
バタンと扉が閉まると、トントンは前と同じようにAの部屋の前に腰を下ろす。耳を澄ませると、家の外でガサガサと動く音がする。片目を開けて、ジッとドアを見つめるトントン。しかし、Aが寝ているということもあり、外へは出られない。
「チッ、誰やねん」
ボソッと呟き、目を閉じる。いつ侵入者が来ても切り殺せるように、片手には刀を持っている。あぐらをかいたまま、寝てしまったトントン。2時間ちょいの睡眠を終えて、仕事へ行く準備をしているAが扉を開けると、トントンが目の前にいてまた小さく声をあげる。
「……慣れないなぁ」
ソッとトントンを起こさないように部屋を出て、家にトントンを残して会社へ向かう。Aが家を出た直後に目を覚ましたトントンは、躊躇無くAの部屋に足を踏み入れた。
案の定、朝早くてドタバタしていたため、部屋は散らかっている。
「ええ匂いする」
スンスンと、息を吸ってAの部屋の匂いを堪能して、トントンは部屋の片付けを開始した。床に落ちている布団を畳んでベッドの上に置き、クローゼットからはみ出ている服を綺麗に戻す。
「……あっ」
嬉しそうな、恥ずかしそうなそんな声色でトントンは、ベッドの下に宝が落ちているのに気づいた。Aの下着だ。洗濯後だったことが幸いだ。
「下着は……どこに戻せばええんや?」
とりあえず、わからなかったので、ブラとパンツを綺麗に並べてベッドの上に置いた。満足気に頷いて、トントンは携帯を開く。組員や、幹部から沢山連絡が来ていたことに焦り、慌てて折り返しの電話をかけた。
一方、A。みっちりと会社でしごかれていた。まだ、Aの年じゃ出世は難しい。平社員として会社の犬をやっているので手一杯だ。
「A。お疲れさん」
「天野先輩。お疲れ様です」
夕方頃に、Aの横に缶コーヒーを置いた先輩である天野呂戊太。これから上がるらしい。
「……A、彼氏できたん?」
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ゆず塩(プロフ) - 何回も読み直して部屋が水没するくらい泣きました…最高です!! (3月29日 1時) (レス) @page50 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - もうこの作品も最高でした!!!!最後のrbrさんとの話がまたよかったです!!大好きです!!←突然の告白 (2022年12月11日 14時) (レス) @page50 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - ボロッボロに泣きました。とても素敵なお話でした。今までたくさんのお話を読んできましたが、こんなに感動して心を動かされてドキドキしたものはこれが初めてでした。何度も読み返させてもらいます!素敵なお話をありがとうございました!! (2022年9月5日 18時) (レス) @page50 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぺに(プロフ) - 。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。←感動しました。ひよこさん大好き。 (2022年6月17日 23時) (レス) @page50 id: bcadc0cb73 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ(初心者) - なんちゅう殺傷能力の高いお話を書くんや・・・最高ですありがとうございました。自分的に最後のrbrさんとの会話がウヘヘヘヘ←キッモ (2022年5月2日 23時) (レス) @page50 id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年10月10日 17時