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彼女の口から流れ込んでくる液体。その苦みがコーヒーだと気づいた瞬間、ショッピは床にそれを吐き出す。口元を拭って、彼女をキッと睨む。
「出てけや」
「あら、どうして?もう契約してしまったのよ」
「コネシマさんをどう騙したんか知らんけど、あの人は恩人やねん。殺そうとしたんやったら、俺は一生お前を許せへん」
「構わないけど。私に迷惑をかけないでちょうだい。貴方は私にとって価値の無い人間なのだから。早く出て行って。寝れないじゃない」
「……痴 女の癖に」
「最低ね」
ショッピが出て行ったのを確認して、Aは取り繕っていた表情を崩す。その顔はあまりにも切ない顔だった。余裕綽々な態度は微塵も残ってなく、今にも消えてしまいそうな儚さと、何かに怯えた目をしている。机の上のコーヒーを捨て、ベッドに寝転がる。
今は夏で暑いはずなのに、鬱先生がつけてくれたクーラーのおかげで快適だ。はぁ、とため息をついたあと、ゆっくり目を閉じる。
「Aちゃん。起きて〜」
「っん」
掠れた声をあげたAは体を起こして起こしに来た男、鬱先生と目が合う。
「もう朝なのね。ありがとう、鬱」
「お手をどうぞ、マイレディ」
「貴方のじゃないわ。その手は私の荷物持ちをする時にもう一度出してちょうだい」
「ああん、きびちい」
流石に昨日の服を着るのは気が引ける。そう言うと、鬱先生は彼女に女物の服を渡す。可愛らしいワンピ一スだ。
「貴方、そういう趣味が」
「ちゃうわ。昔の女の為に買ったんやけど、フラれて渡せんかったの!あげるからそれ着て」
「そう。有難く着させて貰うわ」
Aはカーテンの裏で着替えを済ませて、鬱先生と共に食堂に向かう。扉を開けると、騒がしかった食堂が一瞬で静まる。Aに注目が集まっても尚沈黙は続いた。喋れないのだ。
彼女の美しさを前に、無言になる他ない。グルッペンは彼女を手招きすると、皆の前で紹介する。
「彼女はA。新たに雇ったスパイだ。女だが、『特例』で雇っている。娼婦などといった目的で雇った訳では無い。故に手を出さないように」
それは、自分の為にも。一般兵如き、彼女なら簡単に殺せる。
「よろしくお願いします」
盛り上がる一般兵はまだ気付いていない。この女は悪魔のような本性で、男などゴミ以下で、利用価値の有無で判断していることを。表面だけは、この世界の誰よりも美しい。
「熱い歓迎ね」
席に座った瞬間、シャオロンのナイフが首に当てられる。
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名無していう名前の名無し - しゅ、しゅきれぇしゅ‥‥‥。翻訳 やっばばばばば、ワイのドンピシャキチャーーーーーー神すぎる‼︎‼︎好きです‼︎‼︎。 (8月11日 15時) (レス) @page50 id: cfc3f2d0fe (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - スッゴい面白かったし最高でしたぁぁぁ!!!まじで神ですね!!!! (2022年12月10日 13時) (レス) @page48 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!!かわいい愛のお話だったなあとしみじみ感じております。ありがとうございます。ひよこの子様の作品の主人公ちゃんってみなさんお可愛いですし生き方に尊敬してます。ありがとうございます。体調にもお気をつけください。好きです。 (2022年9月25日 10時) (レス) id: 0350dafbfb (このIDを非表示/違反報告)
みずき - ん“ん”ん“!!!ック…!どう”どい“!!完結おべでどうございまず!!(泣) (2022年9月25日 2時) (レス) @page45 id: 129e1b5429 (このIDを非表示/違反報告)
カンナ(プロフ) - むむさん» 教えてくれてありがとうございます、これから気おつけますm(*_ _)m (2022年9月25日 0時) (レス) id: 07b6abd3f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年9月14日 17時