12 ページ12
「食うぞ」
「やめて」
「やめて…？っふ、お願いする態度があるやろ」
ギリギリと歯ぎしりをしたAは「お願いします」と悔しそうな顔で言う。
「ちゃうやろ？」
「っ!!!」
ゾムはAから少し離れる。逃げようものならすぐに捕まると分かっているからこそどうしようもない。Aは床に手をついて頼み込む。
「お願いします。許してください」
「っは、ははは、ッカッハハハハ!!!!!勝った、俺の勝ちや…」
あの時の屈辱を晴らしたゾム。だけど、顔は浮かない。
「なん、でや。もう俺の勝ちが証明されたんに、なんでまだ……コイツを求めとるんや」
ゾムはその感情の名前を知らなかった。愛を知らないAも同様。ゾムはAの顔を上げさせたあと、荒々しいキスをする。決して彼女にはリードさせない。一方的なキス。息がしづらくなって、ゾムの肩を叩いても彼はやめない。
「ぷはっ、はぁ、最悪」
涙目で言うAにゾムは下半身に熱が溜まっていくのを感じた。これ以上はヤバいと分かっていても、ゾムは止められない。ゾムは自分の指を噛むと、出てきた血を彼女の口に流し込む。
「前、トントンの血、飲んだやろ」
「っ、嫌」
吐き出そうとするが、また口を塞がれる。その際ゾムの唾まで流し込まれて。限界だと思ったのだろう。彼女は本気で泣いて嫌がる。
「もう、やめて……っ!!!!」
彼女の仮面が剥がれ落ちた瞬間だった。ハッとして離れたゾムは、ごめんと謝って部屋を出て行った。
(あんな顔、ズルいわ)
嫌いなはずなのに。心臓がうるさい。男としての生理現象が起こってしまったため、彼は自室に籠って先程の顔を思い出しつつ、処理を済ませた。
「こんな様、スパイ失格じゃないのよ……!!!!」
完全なる敗北に、Aは落ち込む。そろそろ夕食の時間だ。涙を拭って顔を作る。
ああ、今日も完璧で醜い顔だ。
部屋を出ると、数人の一般兵とすれ違う。
「Aさん、お疲れ様です!!!」
「ええ、お疲れ様」
形だけ敬礼するが、顔は違う。デレデレとしており、下心丸出しだ。よく比喩表現で100人中100人が振り返る顔、とあるがまさに彼女がそうだろう。しかし、美しすぎて話す事は出来ない。こうして今日も好奇の目に晒されながら、食堂につく。
「……何の嫌がらせかしら」
「さあ。知らんけど、さっきからゾムが嬉しそうにやっとったで」
Aの席には、いつもの5倍の量の食事が置かれていた。ゾムなりの謝罪のつもりなのだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 867人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名無していう名前の名無し - しゅ、しゅきれぇしゅ‥‥‥。翻訳 やっばばばばば、ワイのドンピシャｷﾁｬｰーーーーー神すぎる‼︎‼︎好きです‼︎‼︎。 (8月11日 15時) (
レス) @page50 id: cfc3f2d0fe (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - スッゴい面白かったし最高でしたぁぁぁ!!!まじで神ですね!!!! (2022年12月10日 13時) (レス) @page48 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 完結おめでとうございます！！！！かわいい愛のお話だったなあとしみじみ感じております。ありがとうございます。ひよこの子様の作品の主人公ちゃんってみなさんお可愛いですし生き方に尊敬してます。ありがとうございます。体調にもお気をつけください。好きです。 (2022年9月25日 10時) (レス) id: 0350dafbfb (このIDを非表示/違反報告)
みずき - ん“ん”ん“！！！ック…！どう”どい“！！完結おべでどうございまず！！(泣) (2022年9月25日 2時) (レス) @page45 id: 129e1b5429 (このIDを非表示/違反報告)
カンナ(プロフ) - むむさん» 教えてくれてありがとうございます、これから気おつけますm(*_ _)m (2022年9月25日 0時) (レス) id: 07b6abd3f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2022年9月14日 17時
