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エミさんは、小さくうん、と答えた。それからも撮影は進み、ようやく終わった。ゴロッとベッドに転がり、スマホを開く。すると、一件、AからLINEが来とった。
『夜分遅くに失礼します。ゾム君!宅飲みのために、いっぱいお酒買ったよ〜!おつまみはお願いしてもいいかな?それと、来週土曜に休み取れました〜!!』
『ホンマに?じゃあ、土曜にしよか。なんか食えへんものある?』
『特にないかなぁ』
『ほんなら適当につまみ買ってくるな』
『ありがとう!じゃあ、おやすみなさい』
『おやすみー』
しばらく画面を見たまま放置していると、黒い画面に戻った。反射で映った顔は、気持ち悪いほどニヤケとった。重症やな。俺。
せや、後で家までの道のり教えんと。
土曜にご褒美があると思ったら、1週間仕事に行くのも辛くなかった。
そして待ちに待った土曜。家で待っていると、インターホンが鳴った。ドアを開けると、大量の酒を持ったAが居た。
そこで、俺は血の気が引いていくのを感じた。
「ごめん、A。連絡寄越せば迎えに行ったのに」
こんなに重いもの女に持たせてどないすんねん。俺の馬鹿。Aの手ぇ赤なってるやん。クソ、数時間前の自分に言ってやりたい。
「私、運送業だから平気だよ。40キロの荷物だって運ぶんだから」
「それでも、男としてのあるやん、そういうの。ホンマにすまん」
「いいってばー」
Aから酒を受け取って、冷蔵庫に詰める。飲む分だけ出して、買ってきたつまみを机の上に置く。
「流石ゾム君。チョイスがいいね。じゃあ、ゾム君」
「ああ、乾杯」
カン、と良い音が鳴る。早速つまみに手をつけたAは、まさかの豆からいった。意外やな。
「ゾム君って、やっぱりモテるの?」
いきなりそう聞かれたから、思わず吹き出してもうた。何故か心配そうに聞くA。
「モテる…かは分からへん」
「彼女さん、居ないんですか?」
「居らんわ!悲しいこと言わせんなや〜」
コツンと額を軽く弾くと、Aは安心したように笑った。
「じゃあ、私と一緒ですね」
「敬語ー」
「あぁっ、」
ハッとして口を押さえるAが可愛くて、気づけば頭を撫でていた。心地良さそうに目を細めるAに、欲が掻き立てられるのが分かった。
「アカン」
声に出すと、少し自分を制御できた気になれた。酒飲んだ勢いで襲うとか洒落にならん。スっと手を離すと、あっ、とAが声を漏らす。
もうやめてくれ……結構限界やねん、俺。
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ただの一般人。 - 今までにない展開がたくさんあって、とても面白かったです!!好きすぎて、何回も読み返しては感動。を繰り返しています。完結が惜しいですが、幸せになってくれたのでOKです! (11月25日 22時) (レス) @page49 id: adc31b39f1 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - めっちゃ泣いたンゴ…!!天才ですね! (7月25日 15時) (レス) @page31 id: 2a8bacdc50 (このIDを非表示/違反報告)
ねお(プロフ) - とてつもなくしゅき…尊すぎて言葉が出ないンゴォォォ!ところでご報告なのですが、テラーでこの尊い尊い作品に似たものがございまして…。もしかしたらひよこの子様のパクリなのでは?と思いコメントさせて頂きました。ご確認の程よろしくお願いいたします (7月21日 17時) (レス) id: c2f9d03b74 (このIDを非表示/違反報告)
ここなつぁ。 - めっちゃ好きです…!夢主ちゃんと、zmさんの愛らしい恋物語が描かれていて、なんだかほっこりしました、笑。これからも頑張ってください! (2023年4月16日 22時) (レス) @page50 id: d72a0ee724 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆのこ(プロフ) - この作品好きすぎて何度も読み返してます。3は超えました。これからも読み返します。本編のネックレスを探すとこもご飯食べているとこも好きなんですが番外編の子供たちは本当にお気に入りです。子供たちに脅威さんのむっつりなところが遺伝してないことを願ってます。 (2023年1月6日 0時) (レス) @page50 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年9月2日 18時