番外編:たった1杯に100杯分の愛 ページ46
「……う、」
「大丈夫？A。辛いよな」
ゾムは心配そうにAを見つめて、眉を下げる。顔を赤くしてベッドに横たわるA。ピピピ、と音がしてゾムがAの服の中に手を入れて体温計を取り出す。
「39.3……とりあえず、解熱剤飲んで」
「ごめんねぇ、折角の休日なのに」
申し訳なさそうなAに、ゾムは優しく微笑む。
「かまへん。妻の看病も、夫としての務めやし」
辛そうにしているAの冷えピタを取り替えたゾムは、枕元に水を置く。
「薬、飲める？」
「ん……」
Aが起き上がるのを手伝い、ペットボトルを持たせる。触っている体がとても熱い。
「……開けて、くれる？」
熱で握力が下がってしまているらしい。ゾムは愛おしいという表情を隠さずにペットボトルを受け取り、Aに水を飲ませる。それと一緒に薬を流し込んで、またベッドに寝かせる。
「ゾム君」
虚ろな目で、ゾムを呼ぶと彼はん？と緩んだ表情を見せる。
「大好き」
「うん、俺も。死ぬ程好きやで。でも、今のAは抱けへんから、あんまり可愛ええこと言わんとってな。元気になったらたっぷり付き合うてもらうからな」
「へへっ、たのしみ」
「……せやから、あんま可愛ええこと言うなっての」
ゾムは照れた顔を手で隠す。笑ったまま寝てしまったAにキスをしたゾム。
「はよ、俺に移しちまえ」
そう言って部屋を出て、キッチンに立つと、換気扇を回して料理を始める。包丁の子気味のいい音が響く。ネットでいちいちこの食べ物は消化の良いものかなどを調べながら、試行錯誤し、Aのために料理を作る。
「っふぅ、できた」
卵粥にほうれん草を浮かべた至ってシンプルなもの。出来たては熱すぎるので、食べやすい温度まで冷ましてからAの部屋に持っていく。ゾムが部屋に入ると、Aも気付いて目を覚ます。
「あ、ごめんな。起こしてもうた」
「んーん。それよりそれ……ご飯？」
流石A。食べ物に目がない。そんなAが愛おしくてゾムは笑みを零す。
「お粥やで。卵粥」
「美味しそう……」
Aがスプーンを掴んだ瞬間、するりと指の間を抜け落ちてベッドに落ちた。カーッと顔を赤くするAに、ゾムは意地悪く笑う。
「A。あーん」
「っ、あ」
羞恥心を抑えてパクッと食べる。
「美味しい……」
「カハハッ、良かったわ。はよ、良うなってな」
「うん」
たった1杯のお粥には、たっぷりの愛が詰まっていた。
fin
番外編:サプライズは程々に→←番外編:いっぱい食べる君が好き
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ただの一般人。 - 今までにない展開がたくさんあって、とても面白かったです！！好きすぎて、何回も読み返しては感動。を繰り返しています。完結が惜しいですが、幸せになってくれたのでOKです！ (11月25日 22時) (
レス) @page49 id: adc31b39f1 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - めっちゃ泣いたンゴ…！！天才ですね！ (7月25日 15時) (レス) @page31 id: 2a8bacdc50 (このIDを非表示/違反報告)
ねお(プロフ) - とてつもなくしゅき…尊すぎて言葉が出ないﾝｺﾞｫｫｫ！ところでご報告なのですが、テラーでこの尊い尊い作品に似たものがございまして…。もしかしたらひよこの子様のパクリなのでは？と思いコメントさせて頂きました。ご確認の程よろしくお願いいたします (7月21日 17時) (レス) id: c2f9d03b74 (このIDを非表示/違反報告)
ここなつぁ。 - めっちゃ好きです…！夢主ちゃんと、zmさんの愛らしい恋物語が描かれていて、なんだかほっこりしました、笑。これからも頑張ってください！ (2023年4月16日 22時) (レス) @page50 id: d72a0ee724 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆのこ(プロフ) - この作品好きすぎて何度も読み返してます。3は超えました。これからも読み返します。本編のネックレスを探すとこもご飯食べているとこも好きなんですが番外編の子供たちは本当にお気に入りです。子供たちに脅威さんのむっつりなところが遺伝してないことを願ってます。 (2023年1月6日 0時) (レス) @page50 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年9月2日 18時
