9 ページ9
ロボロさんは他の人達と違って、その、なんというべきか、身長が小さい。だからだろうか。威圧感がなく、苦手意識も感じない。話しやすい相手と言える人だった。この絶望しかない世界に唯一現れた希望。
「もしかして、出身は日本だったりしますか？」
「生まれも育ちもこの我々国や。ま、とりあえず部屋入り」
ロボロさんに手を引かれ、彼の部屋のソファに腰掛ける。正面に座ればいいのに、わざわざ膝の上に座らせるのはやはりこの人もこの国の人間なのだろう。
「手ぇちっちゃいなぁ。体も俺より全然小さい。すっぽり覆えるくらいやな」
ロボロさんは私を抱き締めると、お腹の前で手を組んで私を体全体で包み込む。彼にならなんでも聞ける。そう思ってしまった私は、先程のチーノさんの発言について聞いてみる。
「この世界には、私のような異世界人に関する小説でも出回っているんですか？」
「ん？Aは賢いなぁ」
「はぐらかさないでください」
「知らん方がええこともあるんやで」
先程とは違う、氷のように冷たい瞳。それでも私は引かずに続ける。
「教えてください、ロボロさん」
私の目を見つめて、ふっと柔らかく笑ったロボロさんは、抱き締める力を少し強めて、私の耳元で囁く。
「覚悟しぃや」
彼の低い声は、電撃のように全身を駆け巡り、脳を刺激した。彼の腕をキュッと両手で掴むと、ロボロさんは私の耳にリップ音と共にキスをする。
「耳弱いんや。かーわい。何から話そうか。まず、さっきのAの推測は間違い。でもいい線いってたで」
「え？」
「この世界に、背の低い女は居らん。だからこそ、居ればいいっちゅう男の欲から、低身長女子を題材にした小説が書かれて、それが爆伸びしてんな。国中でヒットしたそれは、新しいジャンルとなった。低身長女子は、架空の存在。だからこそ何を書いても許された。何でも、な。特に人気なのは奴 隷系の話なんやけど……まだ聞きたい？」
「もう、十分想像できました」
吐き気がする。もちろん、この世界ではそれが普通で、そんな世界に来てしまった私が悪い。それは分かってる。でも、それにしたって。こんなの望んでない。
「俺ら幹部は、絶対Aを傷付けへん。大事やからってのもあるし、やっぱり幹部っちゅうプライドもある。小説は小説で割り切ってるけど、中には割り切れてへんやつも居る。そんなごく一部のクソ野郎共からAを守るのが、俺らの仕事。っちゅう訳でこれからよろしく」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 836人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つみき - 面白くって一気に読みました！！ 24話もしかしてあの方なのでは？と想像するのですが…続き楽しみにしてます‼️ 無理せずに頑張ってください。 (4月16日 20時) (
レス) id: cc34758b39 (このIDを非表示/違反報告)
舞華(プロフ) - これからも無理しない程度に頑張ってください！！続き楽しみにしてます！！(すいません。前の文章長くしすぎました😭) (4月14日 0時) (レス) @page24 id: 95a74c9b55 (このIDを非表示/違反報告)
舞華(プロフ) - 深夜にコメ失礼します！！お話めちゃめちゃ面白いです！！ひよこの子さんの作品はこれで初めて知ったんですが読んでてとても続きが気になるし、愛され具合がちょうど良いです。これをきっかけに他の作品の方も読ませていただいたのですが、他の作品も面白かったです (4月14日 0時) (レス) @page24 id: 95a74c9b55 (このIDを非表示/違反報告)
人外人間白乃雫(プロフ) - ありったけの尊〜かき集め〜♪ってコト…！？ (4月9日 17時) (レス) @page19 id: 4a8cb482e0 (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - はぁっ…！(死んだ音)私の求めてたものがここにあります…(；；)ありがとう… (4月9日 8時) (レス) @page19 id: 9e64766d9e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2024年4月1日 22時
