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馬鹿だ。馬鹿の極みだ私は。惚れたらダメだと言われたのに、勝手に好きになりかけて。勝手に傷付いて。勝手に傷つけて。最低だ。
「A〜飯〜!」
「はい!今行きます」
ゴシゴシと目元を拭って、立ち上がる。私は居候で、やがてここを出ていく身。惚れちゃいけない。余計な感情は排除する。バシン!と自身の頬を叩いて気合いを入れる。
「……また泣いたんか」
「いや」
「嘘つくな。目ぇ赤いぞ」
コネシマさんは男らしい指で、私の目元を撫でる。
「なんで泣いたのか、とかそういうのは聞かへんようにする。そんな顔でキッチン立たれても飯不味なるだけや。おいで」
コネシマさんは満面の笑みで手を広げる。その優しさが今はとても辛い。
「いいです」
「見てて辛いって言ってんねん」
コネシマさんは問答無用で私を大きな体で包み込む。安心する。コネシマさんを押して離れようとしても、ビクともしない。この馬鹿力め。
「コネシマさん!!本当に、大丈夫だから」
「じゃ、俺がこうしたい。家主命令な」
「っぐ」
そう言われれば、何も言い返せない。大人しくコネシマさんの体に収まっていると、コネシマさんは何を思ったか、私の手を取り、手首の痣にキスを落とした。
「っ〜!!」
美しい顔でこちらを見あげ、首をコテン、と傾げるコネシマさん。
「どうや?少しは楽になった?」
「ええ、そうかもしれないです」
全然、むしろ抉られた。コネシマさんは他の女の人にもこんな優しい顔で笑うのか。女嫌いというのは嘘なんじゃないか。そんな悪い想像が頭を過ぎる。
改めて深呼吸して、キッチンに立つ。昨日よりは幾分か料理がしやすい環境になった。調理器具も揃えたし。完璧だ。だが、コネシマさんはどうも人気者らしい。また家のチャイムが鳴った。コネシマさんはため息をついて玄関に消えて行った。人気者で良いなぁ、と思っていたら、コネシマさんの叫び声が。
もしかしてストーカー?泥棒?
慌てて玄関に向かえば、この世のものとは思えない顔をした男が立っていた。
「ひぃ!!!」
「ん?女の子?」
「やっぱ、ゾムの言っとったこと、ホンマなんや!」
「Aさんやっけ」
そう口々に言う訪問者達。コネシマさんは化け物の顔を掴むと、べりっと剥がして地面に叩きつける。
「大先生……気色悪い被り物して、俺の家に来んなや!」
「シッマ、Aちゃん見せてや」
「嫌や。アイツは見世物ちゃうで」
もしかしてこの人達も俳優さんかな。
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まっくろしろすけ - 最初にマグロって出てきて「わ!マグロや!」ってなりました!(なんでマグロでわー!ってなってるのかわかるひとには分かると思う!)この小説好きです! (8月5日 0時) (レス) @page15 id: 017cec3e53 (このIDを非表示/違反報告)
ピッピ168号 - あえ?完結しちゃった…。いや、喜ばしいことなんだけども!好きな小説が終わっちゃうと少し寂しいですね…。次回作も期待してます! (7月23日 15時) (レス) @page43 id: bae95beb1a (このIDを非表示/違反報告)
ピッピ168号 - ??????????????神かな????????????あ、神だったわ。…周回しよ……。 (5月15日 23時) (レス) id: bae95beb1a (このIDを非表示/違反報告)
ピッピ168号 - ふふふふふふふふふふふふふふふ嫉妬する夢主ちゃん可愛い(´∀`*)ウフフ動けない…?あっ…(察し)二人共お幸せに〜楽しめよ〜 (2023年4月27日 22時) (レス) @page42 id: bae95beb1a (このIDを非表示/違反報告)
しょしょ - kn夫婦てぇてぇ… あの女子高生分かりみが深すぎるんじゃぁ〜 (2023年4月14日 22時) (レス) @page41 id: 275501d424 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2023年3月25日 14時