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出て行くという決心がついてからの行動は早かった。荷物は纏められるものはまとめて、コネシマさんに肉じゃがを作り置きしておいて、メモを残す。
【コネシマさんへ。短い間、とっっってもお世話になりました。貴方と居れた時間は、本当に幸せでした。貴方に出会えて良かった。どうか、お元気で。お幸せに。A】
【肉じゃがは温めて食べてくださいね】
書いてたら、涙が溢れてきた。メモ用紙に涙が落ちて、字が滲む。
この広くて快適な家とももうお別れだ。これで少しはコネシマさんが楽になればいいけど。
好きです。コネシマさん。
大好きでした。コネシマさん。
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美味そうやったから、駅前でケーキ買ったけど、A喜ぶかな。
「ただいま!Aー!見て〜!!」
いつもなら、こうやって大声でアイツの名前を呼べば子犬のように走って来ておかえりなさいと言ってくれるのに。今日は全く来てくれない。それどころか、人の気配がない。慌てて靴を脱いでリビングに駆けつけると、そこは真っ暗な部屋が広がっていた。
「A……?」
なんで、なんで居らんの?
電気をつければ、美味そうな肉じゃがと小さなメモ用紙が机の上に置いてあった。涙で滲んだ跡のあるメモ。俺はそれを握りしめて、その場に座り込む。
「ふざけんなや……なんで、なんで急に居なくなるん……?俺のこと捨てへんって言うたやん」
泣いてるのに、お前は居なくなった。ホンマは出て行きたくなかったんちゃうか。まさか今朝のこと気にしとったんか?
「A……!!!」
前までは、誰が居なくなろうとどうでも良かった。でもAは、Aは俺が初めて会った心から大事にしたい女なんや。
出会った時から、守ってやらなアカンと思わせるような空気を纏っとった。初めは冷たく言ったけど、俺の方がとっくにアイツに惚れてもうた。だって可愛ええし、健気やし。
クヨクヨしてるままなんて、俺らしくない。俺は立ち上がって、すぐに玄関に戻った。
「A……俺から逃げられると思うなよ。絶対俺からは離れられへん。離さへん。待ってろ、絶対つ捕まえて連れ戻したる」
家を飛び出した俺は、片っ端からAを探しに行った。食堂、公園、悪ガキの溜まり場。
アイツ、行く宛てもないくせに。夜中にあんな可愛ええ女1人で歩いとったら、どんな目に遭うか。想像しただけで腹立ってくる。
「ッ、Aーーー!!!どこやーーーー!!!!」
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まっくろしろすけ - 最初にマグロって出てきて「わ!マグロや!」ってなりました!(なんでマグロでわー!ってなってるのかわかるひとには分かると思う!)この小説好きです! (8月5日 0時) (レス) @page15 id: 017cec3e53 (このIDを非表示/違反報告)
ピッピ168号 - あえ?完結しちゃった…。いや、喜ばしいことなんだけども!好きな小説が終わっちゃうと少し寂しいですね…。次回作も期待してます! (7月23日 15時) (レス) @page43 id: bae95beb1a (このIDを非表示/違反報告)
ピッピ168号 - ??????????????神かな????????????あ、神だったわ。…周回しよ……。 (5月15日 23時) (レス) id: bae95beb1a (このIDを非表示/違反報告)
ピッピ168号 - ふふふふふふふふふふふふふふふ嫉妬する夢主ちゃん可愛い(´∀`*)ウフフ動けない…?あっ…(察し)二人共お幸せに〜楽しめよ〜 (2023年4月27日 22時) (レス) @page42 id: bae95beb1a (このIDを非表示/違反報告)
しょしょ - kn夫婦てぇてぇ… あの女子高生分かりみが深すぎるんじゃぁ〜 (2023年4月14日 22時) (レス) @page41 id: 275501d424 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2023年3月25日 14時