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通過した瞬間に後ろでカンカンという警告音が聞こえた。
「間に合った〜」
「ようやくコンビニやぁ。そこのバス停裏に自転車停めさせて貰おか」
「どうせバスなんて1時間も来やしないしね」
ザザンザザ…という心地よい波の音を聞きながら、堤防の上に座ってトントンとアイスを頬張る。
「A。1口欲しい」
「私も〜」
トントンは私に、私はトントンに自分のアイスを突き出す。関節キスじゃん、なんて思っているのが私だけじゃないといいな。チラッとトントンの方を見ると、暑さかそれ以外か分からないが、頬が真っ赤になっていた。
「リンゴみたい。リンゴ餅」
プニプニとしたトントンの頬をつつくと、彼は恥ずかしそうに顔を逸らす。
「なんやねん、いきなり」
「照れてる？」
「……うるさい。あ、お前それ、当たりちゃう？」
「ホントだ！交換して貰ってくる〜！！！」
「俺も行く」
新しいアイスを交換してもらったはいいが、私はもう満足した。
「食べて」
「全くお前は……変わらへんな、昔から」
「っふふ、ありがとう」
バクンと一口で食べたトントンは頭痛に顔を歪めている。
「海の方、行く？」
「ええよ」
トントンと石階段を降りて砂浜に出る。
「あつっ、熱い！！」
「乗るか？」
「ありがとう！」
トントンにおんぶしてもらって、岩場まで行く。水で濡れているため、そこまで温度は高くなく、ゆっくりと下ろされる。
「海藻で滑るから気ぃつけや」
「うん。……気持ちいいね」
「ええなぁ。やっぱ、夏休み初日ってだらけるのが1番ええよな」
「そうそう。エアコンの効いた部屋で自堕落な生活を送るんだ」
潮風が涼しい。ふとトントンを見上げると、幼い頃から随分成長したなぁと感心してしまった。
「何？」
「いや、背、抜かされちゃったなって」
「チビ〜」
「ぐぬ……フン、別にいいし」
プイッと横を向くと、後ろから抱き締められた。心臓の音が波の音をかき消すほどうるさい。
「来年も、こうやって過ごせたらええな」
「……関係が変わって無いといいけど」
するとトントンは、少し汗ばんだ手で私の手をキュッと握った。
「ちょ、え？何いきなり……どうしちゃったの」
「好きや、A」
「……知ってる」
「俺の片想いやなくてよかった。でもお前は、まだ付き合いたく無いんやろ？」
「そうだね。両思いの、友達がいい」
蝉の声が聞こえない。海と青空を背景に私達は、贅沢なキスをした。
夏はまだ始まったばかりだ。
fin
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作者名：ひよこの子
x他8人 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年8月6日 18時
