【d!】信用されなくてもいいから従え2

95 ページ46

「私は、参謀という職業です。私が指示を出せば、戦場で皆は私の言う通り動いてくれます。……ですが、私自身、1つでも間違えると、大勢の仲間が死にます」

たったその一言が、シャオロンの心を刺激した。

「指示の内容にもよりますが、10人だけしか死ななくてもいい場合や、100人死ぬ場合もあります」

「せやな」

「黙れやシッマ」

「それくらいの兵を失ったところで、次の戦争で負ける訳じゃない。私はそこで、今度は間違えないように正しい指示を出すことができます。でも、私の間違った指示によって死んでしまった方に、次はありません」

ようやく、それっぽい事を言い始めたAに、みな、ホッと安堵の息をついた。



「人間、死んでも次の人生があるからいいやじゃないんです。死んで、来世また人間に生まれたとしても、赤ちゃんからのスタートで、今の記憶は全部リセット。楽しかった思い出も、悲しい過去も、失敗も。仲間との出会いも。同じ国に、同じ母親の元に生まれてこれる訳じゃない」

Aの話を聞いていたショッピは、今まで閉ざしていた口を開いた。

「Aは、全部経験してきた事を話しとるんやろなぁ」

「どういうこと？」

「Aの過去って、お世辞にも素敵とは言えへんやないですか。」

「せやね」

「家族皆で暮らしてた時の楽しい思い出、三国との悲しい過去、戦争での判断ミスによるシャオさんの怪我、そして俺らと打ち解けて、互いに信じられる仲間になった」

「……Aは、何を伝える気なんやろ」

96→←94

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す