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「嫌だ、嫌だよ……」
「さ、邪魔者は死んだ。帰ろうや、A」
私の肩に手を置いたシッマ。私は彼の手を振り払って彼の顔に平手打ちを食らわせる。
「何?歯向かうん?」
「シッマなんか大っ嫌い!」
「俺はお前の事狂う程愛しとるのにな」
教授は小さく唸り声をあげる。目の前で恩師の命が消えようとしている。もう、私に残された手は1つ。
「シッマ。私、軍に戻る。だからこれ以上、教授にも、ショッピ君にも、チーノ君にも、手を出さないで。今すぐ教授を病院に送って」
「その言葉を待っとったで。おかえり、A」
シッマは救急車を手配してくれた。遠くから近づいてくるサイレンの音は、私にとって地獄の始まりを告げるガベルの音で。教授が運ばれたが最後、もう二度と会うことはできない。
「……あ、A……さん……絶対、たすけ、ます」
「っ、来なくていいです。お世話になりました」
冷たく突き放すのは、人の心を失った気がした。シッマと2人きりになると、シッマは私を抱き締める。
「怖かったやろ。目の前で撃ち合いなんかしてごめんな?」
「……いい。早く行こ」
「待ち遠しいんやな。すぐ連れ帰ったる」
チュッと柔らかなキスを落とすと、私を横抱きにして軍に戻っていった。
いい居場所だったなぁ。
でも私が来たせいで、色んな人が傷ついてしまった。
ごめんねって言ってないのに。
私が居なければ良かったんだ。
でも____帰りたいなぁ。
零れ落ちた涙を見て見ぬふりをして、シッマは軍の門を笑って潜り抜けた。
「久しいな、A」
総統室に連れて行かれた私は、グルッペンを冷ややかに見る。
「抵抗する気は無いよ。ただ、もう二度と教授達に手を出さないで。それを条件に着いてきた」
「ああ、当然だ。俺はお前さえいればもうそれでいい。……ロボロが新しく作った首輪、着けてみ」
グルッペンはわざわざ立ち上がって、銀色に光る首輪を私に嵌めた。冷たいそれにビクッと体を跳ねさせると、グルッペンは目を細める。
「愛おしいな。この首輪、軍から出ると爆発するから気ぃつけや」
「っ!!!」
脱走は不可になってしまった。
「トン氏」
「……ああ、」
トントンは頷くと、どこからか大きな檻を持ってきた。それを総統室の端っこに置くと、檻の戸を開ける。
「A専用の檻〜広いやろ?」
「俺がこの部屋で飼ってやる。トイレや風呂は連れて行ったるから、安心しぃや」
もう、私に人権は無いらしい。
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硝子玉(プロフ) - 最後まで不穏ですね、彼らが妥協するまで眉を顰めて読んでいました。面白かったです。後輩2人が実は同じことしてた、なんて考えましたが流石にそんなことありませんでした。誰の子とも言える書き方が素晴らしいと思います。命令内容が子供を守れとかだと面白いですね。 (8月3日 17時) (レス) @page41 id: d2ec184a3c (このIDを非表示/違反報告)
セネリオ - めっちゃ良かった!!emさんとsypくんとciくんが…!カッコ良すぎて萌え死にする…!そしてなんとなくgrさんだと思います。他の作品も頑張ってください! (2022年12月27日 9時) (レス) @page38 id: bb7bb5003e (このIDを非表示/違反報告)
かきくけの(プロフ) - 個人的にはsnが味方っぽいけど本当は幹部達と同じことしてて、罪悪感から助けてだけど子供がsnの子だったから顔が合わせられなかったとかだったら熱いな。でもたぶんgrさんの子な気がする (2022年10月17日 23時) (レス) id: e7af349437 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるぽろう - 完結おめでとうございます…そしてありがとうございます…!!!序盤が凄く暗かったからこそ、最後のあたたかい終わり方が心に沁みました。てかemさんとshpci後輩かっこよすぎですね一生愛せます!!!今回も素晴らしすぎる作品をありがとうございました!!! (2022年10月15日 13時) (レス) @page38 id: 8509ca10df (このIDを非表示/違反報告)
はっぱ*(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!!本当に物凄く心を掻き乱された作品でした。とてつもなく良い意味で。素晴らしい作品をありがとうございました!! (2022年10月15日 13時) (レス) id: ddb5b2a27a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年9月26日 18時